介護報酬の加算は、「要件を満たす体制をつくる」→「指定権者に届け出る」→「決められた月から算定する」→「要件を満たし続けていることを記録で示す」の4段階で取ります。体制に関する加算は、届出をしないと要件を満たしていても算定できません。

算定開始月のルールは、サービスの区分で違います。居宅サービスは毎月15日以前の届出で翌月から、16日以降の届出なら翌々月から(老企第36号)、施設・居住系は受理された日の属する月の翌月から(月の初日に受理されれば当月から)です(老企第40号)。加算を取る準備は、算定したい月から逆算して届出の締切を決めることから始めます。

この記事では、厚生労働省の解釈通知にもとづいて、加算の取り方の手順と、算定開始後に気をつける点を整理します。


1. 加算の仕組み:告示・解釈通知・届出の3層

加算の根拠は3つの層に分かれています。

内容どこで確認するか
告示(算定基準)加算の名前・単位数・算定要件の大枠厚生労働大臣が定める基準(告示)
解釈通知・Q&A要件の読み方、人数の数え方、記録の要否など老企第36号(居宅サービス等)、老企第40号(施設サービス等)、介護保険最新情報のQ&A
届出体制を整えたことを指定権者に届け出る指定権者の様式(体制等状況一覧表など)

同じ加算でも、告示だけ読んで判断すると、解釈通知で決められている人数の数え方や記録の要件を見落とします。要件の確認は必ず解釈通知とQ&Aまで読んでから行ってください。

これから開業する事業所は、開業の時点から算定したい加算を指定申請の段階で整理し、届出の時期を指定権者に確認しておきます。指定までの手順は介護事業の開業の流れで整理しています。

加算には大きく分けて、事業所の体制(職員配置・研修・会議など)を要件とするものと、利用者ごとの個別の取り組み(計画・実施・記録)を要件とするものがあります。届出の要否は加算ごとに決まっているため、指定権者の体制等状況一覧表で、その加算が届出の対象かどうかを確かめます。


2. 算定開始月のルール

居宅サービス(老企第36号 第一1(5))

訪問介護・通所介護・福祉用具貸与・居宅介護支援などは、次のとおりです。

届出の日算定開始月
毎月15日以前に届出翌月から
毎月16日以降に届出翌々月から

このルールは、単位数が増える届出(加算の新規算定や上位区分への変更)に適用されます。

施設・居住系(老企第40号)

短期入所生活介護、特定施設入居者生活介護、介護老人福祉施設などは、次のとおりです。

受理の日算定開始月
月の初日に受理その月から
月の2日以降に受理翌月から

審査の期間

解釈通知は、届出の審査と受理を原則2週間以内、遅くとも概ね1月以内に行うよう求めています。締切の日に出して補正を求められると、算定開始月が1か月後ろにずれることがあります。締切の1週間前には出すことを事業所の決まりにしておくと安全です。


3. 加算を取る手順

  1. 候補の洗い出し:自事業所のサービスの算定構造(告示の別表)を見て、算定していない加算を一覧にする
  2. 要件の読み込み:告示・解釈通知・Q&Aで、人員・研修・会議・計画・記録の要件を書き出す
  3. 差分の確認:いまの体制で足りないもの(資格者の人数、研修の実施、記録の様式など)を洗い出す
  4. 収支の試算:加算の単位数×想定利用者数×地域区分の単価で増収を見積もり、必要な人件費や手間と比べる
  5. 体制の整備:職員の配置・研修・記録の様式を整え、要件を満たした日を記録する
  6. 届出:指定権者の様式で届け出る(算定開始月から逆算して締切を決める)
  7. 利用者への説明:利用者負担が増えるため、料金表を改め、重要事項説明書の変更を説明する
  8. 算定と記録:算定開始後は、要件を満たし続けていることを示す記録(勤務表、研修記録、会議録、計画書など)を残す

手順4の収支の試算で見落としやすいのは、区分支給限度基準額です。居宅サービスでは、加算を算定すると利用者の限度額の枠を使うため、限度額いっぱいにサービスを使っている利用者では、加算分が自己負担(全額)になることがあります。処遇改善加算のように区分支給限度基準額の算定の対象外とされている加算もあるので、加算ごとに告示で確認します。


4. 要件を欠いたときの扱い

加算の算定を始めたあとに、職員の退職などで要件を満たさなくなることがあります。この場合の扱いは解釈通知ではっきり決まっています(老企第36号 第一4)。

  • 要件を満たさなくなったことが明らかになったときは、速やかに指定権者へ届出を行う
  • 要件を満たさなくなった事実が発生した日から、加算は算定できない
  • 届出をせずに算定を続けた場合は不正請求となり、支払われた介護給付費は返還の対象になる。悪質な場合は指定の取消しの対象にもなる
  • 利用者から受け取った利用者負担のうち、過払いになった分は返還する

「翌月から外せばよい」のではなく、事実が発生した日から算定できない点が重要です。要件にかかわる職員の退職・異動・休職が決まったら、その日のうちに管理者と請求担当が共有する仕組みを作っておきます。


5. 例:令和8年度の処遇改善加算の届出

令和8年度は、介護職員等処遇改善加算の期中改定(令和8年6月施行)があり、届出の日程も通常と違います。厚生労働省の通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(老発0313第6号、令和8年3月13日)にもとづく主な点は次のとおりです。

項目内容
区分令和8年4・5月はⅠ〜Ⅳ。6月以降はⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳ(ロは生産性向上などの特例要件を満たす場合の上乗せ区分)
対象の拡大訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援・介護予防支援などにも加算が新設
計画書の提出原則は算定を始める月の前々月の末日まで。令和8年度は4月15日、加算が新設されたサービスの事業所は6月15日までとする特例
実績報告各事業年度の最終の加算の支払いがあった月の翌々月の末日まで(令和8年度分は通常、令和9年7月31日)
特例要件ケアプランデータ連携システムの利用、生産性向上推進体制加算の算定、社会福祉連携推進法人への所属のいずれか。令和9年3月末までの誓約で申請時から算定できる

区分ごとの加算率と要件の詳細は、上の通知と様式例で確認します。ここでは、加算によっては体制等の届出とは別に「計画書」「実績報告」の提出が要ること、年度ごとの特例で締切が変わることを押さえておいてください。


6. 加算の取り方のチェックリスト

届出の前に、次の項目を確認します。

  • 告示・解釈通知・Q&Aの最新版で要件を確認した(令和8年度改定の内容を含む)
  • 要件を満たした日が記録で説明できる(勤務表・研修記録・会議録など)
  • 算定開始月から逆算した届出の締切を決めた(居宅系は15日、施設系は受理日)
  • 指定権者の最新の様式を使っている
  • 利用者負担の変更を料金表と重要事項説明書に反映した
  • 区分支給限度基準額の対象かどうかを確認し、限度額を超える利用者への影響を試算した
  • 要件を欠いたときに、その日のうちに共有する担当と手順を決めた
  • 請求ソフトの加算の設定を、算定開始月に合わせて変えた

7. 加算の取り方の落とし穴

  • 届出の締切を1日過ぎる:居宅系では16日の届出で算定開始が2か月後になります。月の後半に体制が整う場合は、翌月15日までの届出を目標にします。
  • 要件を「一時的に」欠いたまま算定する:退職者の後任が決まるまでの期間も、要件を欠けば算定できません。
  • 記録が要件の書き方と対応していない:運営指導では、要件ごとに根拠となる記録を確認されます。会議録や研修記録には、要件で求められる内容(日時・参加者・内容)がわかるように書きます。
  • Q&Aの見落とし:告示・解釈通知では読めない取扱いがQ&Aで示されることがあります。改定のたびに介護保険最新情報を確認します。
  • 上位区分への変更も届出が要る:同じ加算の中で区分を上げる場合も、単位数が増えるため届出が必要です。

8. まとめ

  • 加算は、要件を満たす体制を整え、指定権者に届け出て、決められた月から算定する
  • 居宅系は15日以前の届出で翌月から、16日以降なら翌々月から(老企第36号)。施設系は受理の翌月から、月初日の受理なら当月から(老企第40号)
  • 審査は原則2週間以内、遅くとも概ね1月以内。締切の直前に出さない
  • 要件を欠いたら速やかに届け出る。事実が発生した日から算定できず、届け出ずに算定すると返還・取消しの対象になる
  • 令和8年度の処遇改善加算は6月施行の期中改定で区分と締切が変わっている。通知(老発0313第6号)で確認する

参考資料