ケアマネジャーへの営業で紹介が続くかどうかは、訪問の回数ではなく、「比べやすい受け入れ情報」と「利用開始後の報告の質」で決まります。ケアマネジャーは、利用者の選択にもとづき、特定の種類のサービスや事業者に不当に偏らないよう公正中立にケアマネジメントを行う立場です(指定居宅介護支援等基準 第1条の2)。利用者は複数の事業所の紹介を求めることができ(同第4条第2項)、居宅介護支援事業所は前6か月間のケアプランでの利用割合などを利用者に説明するよう努めることになっています(同第4条第3項)。

つまり、ケアマネジャーは「頼まれたから紹介する」のではなく、利用者に説明できる理由があって事業所を選ぶ必要があります。営業でやるべきことは、その理由になる情報を、正確に、使いやすい形で渡し続けることです。そして、紹介の見返りとしての利益の提供は、運営基準で禁じられています(指定居宅サービス等基準 第35条ほか)。

この記事では、運営基準の条文にもとづいて、禁じられていること、利用開始前に渡す情報、利用開始後の連携の手順を整理します。事業所の情報を経路ごとに整える全体像は介護事業所の集客で扱っています。


1. ケアマネジャーの立場を条文で確認する

営業の前提として、ケアマネジャーと居宅介護支援事業所に課されているルールを押さえます。

条文(指定居宅介護支援等基準)内容営業への意味
第1条の2(基本方針)利用者の選択にもとづき、多様な事業者から総合的・効率的にサービスが提供されるよう配慮し、特定の種類や事業者に不当に偏らないよう公正中立に行う選ばれる理由(利用者に合う根拠)が必要
第4条第2項利用者は複数の事業者の紹介を求めることができること等を説明し、理解を得る比べられる前提で情報を用意する
第4条第3項前6か月間に作成したケアプランにおける訪問介護・通所介護などの割合と、同一事業者による提供割合を説明し、理解を得るよう努める同じ法人のサービスに偏っていないかも見られている
第25条第1項・第2項事業者・管理者がケアマネジャーに特定の事業者を位置付けるよう指示すること、ケアマネジャーが利用者に特定の事業者の利用を指示することの禁止法人の指示で紹介を得ることはできない
第25条第3項特定の事業者のサービスを利用させることの対償として、金品その他の財産上の利益を収受することの禁止謝礼・見返りは受け取れない

サービス事業者の側にも、対になる規定があります。訪問介護の運営基準は、居宅介護支援事業者やその従業者に対し、利用者に特定の事業者のサービスを利用させることの対償として、金品その他の財産上の利益を供与してはならないとしています(指定居宅サービス等基準 第35条)。自事業所のサービスの基準で、同じ趣旨の規定を確認してください。


2. 利用開始前に渡す情報

ケアマネジャーが事業所の候補を挙げるときに知りたいのは、次のことです。

項目伝える内容の例
地域通常の事業の実施地域、送迎の範囲
曜日・時間受け入れできる曜日と時間帯、早朝・夜間・土日の対応の可否
空き状況曜日ごとの空き、訪問の空き時間帯
状態像認知症、医療的ケア、重度の方、車いすの方などへの対応の可否と条件
サービスの特徴入浴の方法、機能訓練の内容、食事の対応など、他と比べられる具体的な内容
受け入れの速さ相談から利用開始までの目安、退院直後の受け入れの可否
連絡の窓口担当者、連絡のつきやすい時間、不在時の連絡先

渡し方のポイント

  • 1枚にまとめる:ケアマネジャーは多くの事業所の情報を扱います。A4判1枚で、上の項目が一目でわかる形にします。
  • 空き状況は日付を入れて更新する:古い空き情報は信用を失う原因になります。「いつ時点の情報か」を必ず書きます。
  • 断る条件も書く:受け入れできない状態像や時間帯を先に示すと、合わない依頼の往復が減り、ケアマネジャーの手間も減ります。
  • 運営規程・重要事項説明書と一致させる:営業日・料金・実施地域が書類と違うと、利用開始の段階で問題になります。

3. 利用開始後の連携:紹介が続く理由はここにある

ケアマネジャーが次の利用者を紹介するかどうかは、すでに紹介した利用者への対応を見て判断されます。運営基準には、利用開始後の連携に関する規定がいくつもあり、これを丁寧に行うことが最も確かな営業になります。

連携の内容根拠実務
個別サービス計画の提出ケアマネジャーは、ケアプランに位置付けた事業者に訪問介護計画などの提出を求める(指定居宅介護支援等基準 第13条第12号)計画を作成・変更したら速やかに提出する
利用者の状態の情報提供サービス提供責任者は、把握した利用者の服薬状況、口腔機能その他の心身の状態と生活の状況について必要な情報を居宅介護支援事業者等に提供する(指定居宅サービス等基準 第28条第3項第2号の2、訪問介護)変化に気づいたら、事実・日時・対応を簡潔に報告する
サービス担当者会議サービス提供責任者は、サービス担当者会議への出席等により居宅介護支援事業者等と連携を図る(同第28条第3項第3号)事前に利用者の様子をまとめて参加する
密接な連携居宅介護支援事業者その他の保健医療・福祉サービスを提供する者との密接な連携に努める(同第14条第1項)日ごろの連絡の窓口を決めておく
提供終了時の情報提供サービスの提供の終了に際し、居宅介護支援事業者への情報の提供に努める(同第14条第2項)終了の理由と経過を報告する

ケアマネジャーは、事業者から受けた利用者の服薬状況などの情報を、必要に応じて主治の医師や薬剤師に提供するものとされています(指定居宅介護支援等基準 第13条第13号の2)。事業所からの報告は、医療との連携にもつながる情報です。「何かあれば連絡します」ではなく、日々の変化を短く正確に伝えることが、ケアマネジャーにとって最も価値のある情報提供になります。

報告の型

報告は、次の順で簡潔にまとめると伝わりやすくなります。

  1. いつ・誰が:日時と、気づいた職員
  2. 何があったか:事実(観察したこと、利用者・家族の発言)
  3. 何をしたか:事業所としての対応
  4. お願いしたいこと:ケアプランの見直しの相談、主治医への連絡の依頼など

4. 訪問・連絡の進め方

  1. 担当エリアの居宅介護支援事業所を一覧にする:市町村のホームページや介護サービス情報公表システムで確認する
  2. 初回は情報を渡すことに絞る:1枚の資料を渡し、受け入れの条件と空き状況を説明する。長居しない
  3. 更新のたびに知らせる:空き状況や受け入れの条件が変わったら、FAXやメールなど、相手が受け取りやすい方法で知らせる
  4. 紹介を受けたら、その後の報告を丁寧に行う:計画の提出、状態の変化の報告、担当者会議への出席
  5. 断ったときも理由を伝える:受け入れできない理由と、受け入れできる条件を伝える
  6. 記録を残す:どの居宅介護支援事業所から、どの経路で紹介を受けたかを記録し、連携の方法を見直す

営業のチェックリスト

  • 1枚の資料に、地域・曜日・時間・空き状況・状態像・連絡先が入っている
  • 空き状況に日付が入っており、変わったら更新している
  • 資料の内容が運営規程・重要事項説明書と一致している
  • 手土産・謝礼など、紹介の見返りと受け取られるものを渡していない
  • 個別サービス計画を作成・変更したら速やかに提出している
  • 利用者の状態の変化を、決まった型で報告している
  • サービス担当者会議に出席し、事前に情報をまとめている

5. 落とし穴

  • 紹介のお願いだけをする:ケアマネジャーは公正中立に事業所を選ぶ立場です。お願いより、選ぶ理由になる情報を渡します。
  • 見返りを提供する:紹介の対償としての金品その他の財産上の利益の供与は禁じられています。
  • 同じ法人の居宅介護支援事業所に頼る:法人の管理者がケアマネジャーに特定の事業者を位置付けるよう指示することは禁じられています(指定居宅介護支援等基準 第25条第1項)。利用割合の説明もあり、偏りは利用者にも見えます。
  • 利用開始後の報告が遅い・少ない:紹介した利用者の状態がわからない事業所には、次の紹介はしにくくなります。
  • 空きがないのに訪問を続ける:受け入れできない時期は、受け入れ再開の見込みを伝えるだけにし、再開したらすぐ知らせます。

6. まとめ

  • ケアマネジャーは公正中立にケアマネジメントを行う立場で(指定居宅介護支援等基準 第1条の2)、利用者は複数の事業所の紹介を求められる(同第4条第2項)
  • 紹介の対償としての利益の供与・収受は禁じられている(指定居宅サービス等基準 第35条、指定居宅介護支援等基準 第25条第3項)
  • 利用開始前は、地域・曜日・時間・空き・状態像・連絡先を1枚にまとめ、日付を入れて更新する
  • 利用開始後は、個別サービス計画の提出、服薬状況や心身の状態の情報提供、サービス担当者会議への出席を丁寧に行う。これが次の紹介の理由になる
  • どの居宅介護支援事業所から紹介を受けたかを記録し、連携の方法を見直す

参考資料