介護職員等処遇改善加算は、令和8年6月の期中改定で「対象」と「区分」が変わりました。対象は介護職員から介護従事者に広がり、区分はⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6つになりました。「ロ」は、生産性向上や協働化に取り組む事業所の上乗せ区分です。また、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援・介護予防支援にも加算が新設されました。

厚生労働省の改定の概要では、介護従事者に幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置と、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員に月0.7万円(2.4%)の上乗せ措置を行い、合計で介護職員について最大月1.9万円(6.3%、定期昇給0.2万円込み)の賃上げが実現する措置とされています。改定率は+2.03%(うち処遇改善分+1.95%)です。

この記事では、厚生労働省の通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(老発0313第6号、令和8年3月13日)にもとづいて、サービス別の加算率、区分ごとの要件、手続きの期限を一覧で整理します。


1. 処遇改善加算の成り立ちと令和8年度の位置づけ

処遇改善の加算は、次のように変わってきました。

時期内容
平成24年度介護職員処遇改善加算の創設
令和元年10月介護職員等特定処遇改善加算の創設
令和4年10月介護職員等ベースアップ等支援加算の創設
令和6年6月3つの加算を「介護職員等処遇改善加算」に一本化
令和8年6月期中改定。対象を介護従事者に拡大、上乗せ区分(ロ)を新設、訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援などに新設

令和8年度の改定は、3年に1度の定期の改定(次は令和9年度)を待たずに行われた期中改定です。社会保障審議会介護給付費分科会の審議報告(令和7年12月23日)では、令和9年度改定で、加算Ⅰ・Ⅱの取得の進展などを踏まえて加算を整理するとされています。

なお、令和7年度補正予算の「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」は、令和7年12月から令和8年5月までの分を対象とする補助金で、加算とは別の制度です。


2. サービス別の加算率(令和8年6月以降)

加算の単位数は、サービスごとの総単位数(基本報酬と各種加算・減算を合わせたもの)×加算率で計算します。処遇改善加算は、区分支給限度基準額の算定の対象外です。

訪問系・通所系など

サービスⅠイⅠロⅡイⅡロ
訪問介護27.0%28.7%24.9%26.6%20.7%17.0%
夜間対応型訪問介護・定期巡回・随時対応型訪問介護看護26.7%27.8%24.6%25.7%20.4%16.7%
訪問入浴介護12.2%13.3%11.6%12.7%10.1%8.5%
通所介護11.1%12.0%10.9%11.8%9.9%8.3%
地域密着型通所介護11.7%12.7%11.5%12.5%10.5%8.9%
通所リハビリテーション10.3%11.1%10.0%10.8%8.3%7.0%
認知症対応型通所介護21.6%23.6%20.9%22.9%18.5%15.7%

多機能・短期入所・居住系・施設系

サービスⅠイⅠロⅡイⅡロ
小規模多機能型居宅介護17.1%18.6%16.8%18.3%15.6%12.8%
看護小規模多機能型居宅介護16.8%17.7%16.5%17.4%15.3%12.5%
短期入所生活介護16.3%17.6%15.9%17.2%13.6%11.3%
特定施設入居者生活介護14.8%15.9%14.2%15.3%13.0%10.8%
認知症対応型共同生活介護21.0%22.8%20.2%22.0%17.9%14.9%
介護老人福祉施設16.3%17.6%15.9%17.2%13.6%11.3%
介護老人保健施設9.0%9.7%8.6%9.3%6.9%5.9%
介護医療院6.2%6.6%5.8%6.2%4.7%4.0%

令和8年6月に新設されたサービス

サービス加算率
訪問看護1.8%
訪問リハビリテーション1.5%
居宅介護支援・介護予防支援2.1%

対象外のサービス:福祉用具貸与、特定福祉用具販売、居宅療養管理指導(いずれも介護予防を含む)。

介護予防・日常生活支援総合事業のサービスは、第一号訪問事業は訪問介護と、第一号通所事業は利用定員19人以上なら通所介護、19人未満なら地域密着型通所介護と同じ加算率です。表に載せていないサービス(地域密着型特定施設、地域密着型介護老人福祉施設、短期入所療養介護など)の加算率は、通知の表1-2〜1-5で確認してください。

参考:令和8年4・5月の区分

4・5月はⅠ〜Ⅳの4区分でした。例えば訪問介護はⅠ 24.5%・Ⅱ 22.4%・Ⅲ 18.2%・Ⅳ 14.5%、通所介護はⅠ 9.2%・Ⅱ 9.0%・Ⅲ 8.0%・Ⅳ 6.4%です。


3. 区分ごとの要件

通知が示す要件は、賃金改善のほかに①〜⑧の8つです。区分によって、満たす必要のある要件が違います。

要件内容
① 月額賃金改善要件加算Ⅳ相当額の2分の1以上を、基本給または毎月決まって支払う手当の改善に充てる
② キャリアパス要件Ⅰ職位・職責・職務内容に応じた任用の要件と賃金体系を定め、就業規則等で明確にして周知(常時雇用10人未満は内規でも可)
③ キャリアパス要件Ⅱ資質向上の目標と研修計画を定め、研修の機会の確保または資格取得の支援を行い、周知
④ キャリアパス要件Ⅲ経験・資格・定期の評価のいずれかにもとづく昇給の仕組みを設け、就業規則等で明確にして周知
⑤ キャリアパス要件Ⅳ経験・技能のある介護職員のうち1人以上の賃金改善後の見込額が年額440万円以上(小規模事業所など合理的な説明がある例外あり)
⑥ キャリアパス要件Ⅴ介護福祉士などの配置の要件(サービス提供体制強化加算Ⅰ・Ⅱ、特定事業所加算Ⅰ・Ⅱ、入居継続支援加算、日常生活継続支援加算のいずれかを算定)
⑦ 職場環境等要件入職促進、資質の向上、両立支援、健康管理、やりがい・働きがいの醸成、生産性向上の各区分の取組
⑧ 特例要件(令和8年度)生産性向上・協働化の取組(下の表)ロのみロのみ

「経験・技能のある介護職員」は、介護福祉士の資格を持ち、所属する法人等での勤続年数が10年以上の介護職員を基本としつつ、事業所の裁量で設定できます。

職場環境等要件の取組の数

区分求められる取組
Ⅰ・Ⅱ生産性向上以外の5つの区分でそれぞれ2つ以上、生産性向上の区分で3つ以上(うち⑰または⑱は必須)。取組の内容を、介護サービス情報公表制度の「事業所の特色」欄などで公表
Ⅲ・Ⅳ生産性向上以外の5つの区分でそれぞれ1つ以上、生産性向上の区分で2つ以上

生産性向上推進体制加算を算定している場合は、生産性向上の区分の要件を満たすものとされます。1法人1事業所の小規模な法人には、生産性向上の区分の取組の数について緩和があります。

特例要件(⑧):「ロ」を取るための要件

次のいずれかを満たす事業所が、Ⅰロ・Ⅱロを算定できます。

特例要件対象のサービスの例
ア ケアプランデータ連携システムを利用している訪問系・通所系・多機能系など(通知の表1-2・1-3のサービス)
イ 生産性向上推進体制加算Ⅰ・Ⅱを算定している短期入所・多機能系・居住系・施設系など(通知の表1-3・1-4のサービス)
ウ 社会福祉連携推進法人に所属しているサービスを問わない

特例要件は、令和9年3月末までに満たすことを誓約すれば、申請の時点から算定できます。また、特例要件を満たす事業所は、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳと職場環境等要件についても、令和9年3月末までに満たす誓約で算定できる扱いです。

新設サービス(訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援など)の要件

新設されたサービスは区分が1つで、特例要件を満たすか、加算Ⅳに準じた要件(キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと、職場環境等要件として5区分でそれぞれ1つ以上・生産性向上で2つ以上)を満たすことが必要です。いずれも令和9年3月末までの誓約で算定できます。


4. 賃金改善のルール

ルール内容
賃金改善の額加算額以上の賃金改善を行う。賃金改善に伴う法定福利費などの事業主負担の増加分を含めてよい
改善の方法増加分はベースアップ(基本給などの引上げ)で行うことが基本
職種間の配分事業所の判断で柔軟に配分できる。ただし、特定の職種や個人に著しく偏った配分は不可
賃金水準の引下げ経営の悪化などで賃金水準を引き下げる場合は、特別事情届出書を出す
不正虚偽の計画書・実績報告による算定などは、加算の返還や指定の取消しの対象

5. 手続きの期限(令和8年度)

手続き原則令和8年度の扱い
処遇改善計画書加算を初めて算定する月の前々月の末日まで4月15日まで。加算が新設されたサービスの事業所は6月15日まで
体制等の届出居宅系は算定する月の前月15日まで、施設系は算定する月の1日まで計画書と同様の特例あり(通知で確認)
変更届出書法人の合併などによる作成単位の変更、事業所の増減、キャリアパス要件などの変更、加算区分の変更など就業規則の改訂などは実績報告のときに報告
実績報告書各事業年度の最終の加算の支払いがあった月の翌々月の末日まで通常は令和9年7月31日
根拠資料の保存計画書・実績報告の根拠となる資料を2年間保存

計画書と実績報告は、法人単位でまとめて作ることができます。体制等の届出の一般的なルール(15日と算定開始月の関係)は介護報酬の加算の取り方で、変更届と処遇改善加算の変更届出書の違いは介護事業所の変更届で整理しています。


6. 区分の選び方の手順

  1. 自事業所のサービスの加算率を確認する(上の表と通知の表1-2〜1-5)
  2. いま満たしている要件を棚卸しする:キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ、職場環境等要件の各区分の取組数
  3. 特例要件の見込みを確認する:ケアプランデータ連携システムの利用、生産性向上推進体制加算の算定、社会福祉連携推進法人への所属のいずれかを、令和9年3月末までに満たせるか
  4. 区分ごとの加算額を試算する:総単位数×加算率×地域区分の単価で、区分ごとの年額を出す
  5. 賃金改善の計画を立てる:加算額以上の改善を、ベースアップ中心に、職種間の配分を決めて計画する
  6. 就業規則・賃金規程を整える:キャリアパス要件の内容を書面にして周知する
  7. 計画書と体制等の届出を出す

確認のチェックリスト

  • 令和8年度分の通知(老発0313第6号)の様式を使っている
  • 6月以降の区分(イ・ロ)を前提に試算した
  • キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲの内容が就業規則・賃金規程に書かれ、周知されている
  • 職場環境等要件の取組数が、区分の要件を満たしている(Ⅰ・Ⅱは公表も必要)
  • 特例要件を誓約で満たす場合、令和9年3月末までの実施計画がある
  • 賃金改善額が加算額以上になる計画になっている
  • 根拠資料を2年間保存する場所と担当を決めた

7. 落とし穴

  • 4・5月の区分のまま6月以降も計算する:6月からは区分と加算率が変わっています。請求ソフトの設定も確認してください。
  • 特例要件を誓約したまま実施しない:令和9年3月末までに満たさなかった場合の扱いは通知・Q&Aで確認し、実施の計画を立てておきます。
  • 職場環境等要件の公表を忘れる:Ⅰ・Ⅱは取組の内容の公表が要件です。
  • 賃金改善が加算額を下回る:実績報告で加算額以上の改善が確認できないと、返還の対象になります。
  • 新設サービスで計画書の期限を過ぎる:訪問看護・居宅介護支援などで6月から算定するには、6月15日までの計画書の提出が必要でした。7月以降に算定を始める場合は、原則どおり前々月末までに出します。

8. まとめ

  • 令和8年6月から、処遇改善加算の対象は介護従事者に広がり、区分はⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6つになった
  • 「ロ」は、ケアプランデータ連携システムの利用、生産性向上推進体制加算の算定、社会福祉連携推進法人への所属のいずれかを満たす事業所の上乗せ区分。令和9年3月末までの誓約で算定できる
  • 訪問看護(1.8%)・訪問リハビリテーション(1.5%)・居宅介護支援と介護予防支援(2.1%)に新設。福祉用具貸与・販売、居宅療養管理指導は対象外
  • 加算額以上の賃金改善が必要。職種間の配分は柔軟だが、著しい偏りは不可
  • 計画書は前々月末(令和8年度は4月15日・新設サービスは6月15日)、実績報告は翌々月末(令和8年度分は通常、令和9年7月31日)

参考資料