介護事業所の集客は、「利用者がどこを通って事業所にたどり着くか」を押さえ、その経路ごとに正確な情報を置くことから始まります。訪問介護や通所介護などの居宅サービスは、多くの場合、ケアマネジャーが作るケアプランに事業所が位置付けられて利用が始まります。一方で、利用者はケアマネジャーに複数の事業所の紹介を求めることができ(指定居宅介護支援等基準 第4条第2項)、家族は介護サービス情報公表システムや地図検索で事業所を比べます。
つまり、ケアマネジャー・家族・病院の3者が、それぞれの立場で事業所を比べられる情報を用意することが集客の土台です。広告を増やす前に、受け入れの条件・空き状況・サービスの内容・費用が、どの経路でも同じ内容で正確に伝わっているかを確認してください。
この記事では、運営基準と介護サービス情報公表制度にもとづいて、経路ごとの情報の整え方を整理します。
1. 利用者が事業所とつながる経路
居宅サービスの利用は、一般に次の流れで始まります。
- 本人・家族が市町村の窓口や地域包括支援センターに相談し、要介護認定を受ける
- 居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)と契約する
- ケアマネジャーがアセスメントを行い、ケアプランの案に事業所を位置付ける
- 本人・家族が同意し、事業所と契約して利用が始まる
この流れの中で、事業所を選ぶ場面に関わるのは次の3者です。
| 関わる人 | 事業所を選ぶ場面 | 知りたいこと |
|---|---|---|
| ケアマネジャー | ケアプランに位置付ける事業所の候補を挙げる | 受け入れできる曜日・時間・地域、対応できる状態像(医療的ケア・認知症など)、空き状況、連絡のつきやすさ |
| 本人・家族 | 候補を比べて選ぶ。自分で探して候補を挙げることもある | サービスの内容、費用、雰囲気、送迎・入浴などの具体的な対応 |
| 病院の退院支援の担当者 | 退院に合わせてサービスを調整する | 退院直後から受けられるか、医療的な対応の範囲、連絡の窓口 |
ケアマネジャーは、利用者の選択にもとづき、特定の種類のサービスや事業者に不当に偏らないよう、公正中立にケアマネジメントを行うことが求められています(指定居宅介護支援等基準 第1条の2)。また、居宅介護支援事業所は、前6か月間に作成したケアプランの訪問介護・通所介護などの利用割合や、同一事業者による提供割合を利用者に説明し、理解を得るよう努めなければなりません(同基準 第4条第3項)。
このため、「頼めば紹介してもらえる」関係ではなく、「比べたときに選ばれる」情報を持っていることが、紹介が続く事業所の条件になります。ケアマネジャーへの情報提供の具体的な方法は、別の記事で詳しく扱います。
2. 家族が見る情報:情報公表システム・ホームページ・地図検索
介護サービス情報公表システム
介護サービス情報公表制度は、介護保険法第115条の35にもとづき、事業所が都道府県知事に報告した情報を公表する仕組みです(平成18年4月開始)。厚生労働省は、この制度を利用者が介護サービスや事業所・施設を比較・検討して適切に選ぶための情報を都道府県が提供する仕組みと説明しています。公表の内容は、基本情報・運営情報・任意の情報に分かれます。
都道府県の計画の基準日前の1年間に、介護報酬などの対象となるサービスの対価として支払いを受けた額が100万円以下の事業所などは、報告の対象から外れます(介護保険法施行規則第140条の44)。公表システムの情報は、ケアマネジャーや病院の担当者が事業所を調べるときにも使われます。
- 営業日・営業時間・サービス提供地域が最新か
- 管理者や連絡先が最新か
- 事業所の特色(得意とする状態像、取り組み)を具体的に書いているか
- 処遇改善加算Ⅰ・Ⅱを算定する場合、職場環境等要件の取組を公表しているか
自社のホームページ
家族が知りたいのは、制度の説明ではなく「うちの家族の場合、どうなるか」です。次の情報を、写真や具体的な1日の流れと合わせて載せます。
| 項目 | 載せる内容 |
|---|---|
| サービスの内容 | 1日の流れ(通所)、訪問でできること・できないこと(訪問介護) |
| 対応できる状態像 | 認知症、医療的ケア、車いす、入浴の方法など、受け入れの条件 |
| 費用 | 介護保険の利用者負担の目安の計算方法、保険外の費用(食費・日用品など) |
| 送迎・地域 | 送迎の範囲、通常の事業の実施地域 |
| 相談の方法 | 問い合わせの窓口、見学の受け付け方 |
費用や条件は、運営規程と重要事項説明書の内容と一致させることが大切です。ホームページだけ古い料金が残っていると、トラブルの原因になります。
地図検索(Googleビジネスプロフィールなど)
事業所名で検索されたときや、「地域名+デイサービス」などで地図検索されたときに表示される情報です。Googleのガイドラインでは、次の点が定められています。
- ビジネス名には、キーワードやキャッチフレーズなどの不要な情報を含めない(実際の名称だけにする)
- 顧客が訪れることのできる拠点、または顧客のいる場所に出向くビジネスが対象。訪問介護のように利用者宅に出向く事業所は、サービス提供地域を指定する
- 営業時間は、顧客に対応できる通常の時間を入れる
- カテゴリは、中核の事業にあてはまるものをできるだけ少なく選ぶ
登録した情報は、情報公表システム・ホームページと同じ名称・住所・電話番号・営業時間にそろえます。
3. 病院・地域包括支援センターとの連携
退院の前後や、要介護認定の前の段階では、病院の退院支援の担当者や地域包括支援センターが、利用できるサービスの情報を必要としています。
- 受け入れの条件を1枚にまとめる:対応できる医療的ケア、受け入れまでの日数、連絡の窓口を1枚にして渡す
- 空き状況を更新する:空きの情報は古くなると信用を失います。更新の頻度と方法を決め、変わったら知らせる
- 地域の会議に参加する:地域ケア会議や、地域の事業所の連絡会など、顔の見える関係ができる場に参加する
ここでも、利益の供与は禁じられています。訪問介護の運営基準は、利用者に特定の事業者のサービスを利用させる対償として、居宅介護支援事業者やその従業者に金品その他の財産上の利益を供与してはならないとしています(指定居宅サービス等基準 第35条)。居宅介護支援事業者と従業者の側も、その収受が禁じられています(指定居宅介護支援等基準 第25条第3項)。
4. 集客の前に整えること:受け入れの体制
情報を整えても、問い合わせに応えられなければ利用にはつながりません。集客の前に、次の体制を確認します。
- 問い合わせを受ける担当と、不在時の対応が決まっている
- 見学・体験の受け方と、その後の連絡の流れが決まっている
- 空き状況(曜日・時間・人数)を、職員の誰が見てもわかる形で管理している
- 断る場合の理由と、代わりの事業所の案内の方針が決まっている
- 受け入れを増やしたときの人員配置が基準を満たすか確認している
断り方も集客の一部です。受け入れできない理由を具体的に伝え、受け入れできる条件(曜日・時間など)を示すと、次の紹介につながります。
5. 情報を整える手順
- 自事業所の強みを言葉にする:対応できる状態像、得意な支援、他の事業所との違いを、職員と話し合って書き出す
- 受け入れの条件を整理する:地域、曜日、時間、状態像、空き状況
- 運営規程・重要事項説明書と照合する:営業日・料金・実施地域などを一致させる
- 経路ごとに情報を置く:情報公表システム、ホームページ、地図検索、紹介資料(ケアマネジャー・病院向け)
- 更新の担当と頻度を決める:空き状況や料金の変更があったら、すべての経路を同じ日に直す
- 問い合わせの経路を記録する:新規の利用者が、どの経路で事業所を知ったかを記録し、力を入れる経路を見直す
事業所の名称・所在地・営業時間・運営規程を変えた場合は、10日以内の変更届も必要です(介護保険法第75条第1項)。変更届と情報の更新を同じ手順に組み込んでおくと、漏れが防げます。手続きは介護事業所の変更届で整理しています。
6. 落とし穴
- 情報が経路ごとにばらばら:ホームページ・情報公表システム・地図検索で営業時間や料金が違うと、信頼を損ねます。
- 空き状況を知らせたまま更新しない:「空きがあると聞いたのに埋まっていた」が続くと、次から紹介されにくくなります。
- 謝礼や利益の提供で紹介を得ようとする:運営基準で禁じられています。
- 誇張した表現を使う:受けられないサービスや確かでない効果を書くと、利用者とのトラブルにつながります。書くのは、実際に提供できることだけにします。
- 強みが抽象的:「笑顔あふれる」「アットホーム」だけでは比べられません。対応できる状態像や具体的な支援の内容で示します。
7. まとめ
- 居宅サービスの利用は、多くがケアマネジャーのケアプランを通じて始まる。利用者は複数の事業所の紹介を求めることができる(指定居宅介護支援等基準 第4条第2項)
- ケアマネジャーは公正中立が求められ(同第1条の2)、前6か月のサービスの利用割合を説明するよう努める(同第4条第3項)。比べたときに選ばれる情報を持つことが大切
- 家族は、介護サービス情報公表システム・ホームページ・地図検索で比べる。3つの情報を運営規程とそろえて、同じ内容にする
- 病院・地域包括支援センターには、受け入れの条件と空き状況を1枚にまとめて渡し、更新する
- 紹介の対償としての利益の供与は禁じられている(指定居宅サービス等基準 第35条ほか)
参考資料
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第1条の2・第4条・第25条(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100038
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第35条(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第75条・第115条の35(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
- 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第140条の44(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036
- 厚生労働省「介護サービス情報公表制度」:https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-kouhyou.html
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」:https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/
- Google ビジネス プロフィール ヘルプ「Google でのビジネス情報の表示に関するガイドライン」:https://support.google.com/business/answer/3038177?hl=ja