介護サービスの重要事項説明書は、サービスの提供を始める前に、利用申込者か家族に文書を渡して説明し、利用申込者本人の同意を得るための書類です。訪問介護の運営基準は、提供の開始に際し、あらかじめ「運営規程の概要、訪問介護員等の勤務の体制その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、当該提供の開始について利用申込者の同意を得なければならない」と定めています(指定居宅サービス等基準 第8条第1項)。通所介護など多くの居宅サービスにも、この規定が準用されます(通所介護は第105条)。
つまり重要事項説明書は、事業所を選ぶための比較の材料であり、同時に、後で「聞いていない」と言われないための事業所と利用者双方の保護の書類です。書くことは運営規程と一致させ、説明と同意の記録を残し、変わったら知らせる。この3点が崩れると、苦情や運営指導での指摘につながります。
この記事では、運営基準の条文、厚生労働省の解釈通知、兵庫県の「重要事項説明書及び契約書のガイドライン(令和6年版)」にもとづいて、書くべき事項、説明と同意の相手と方法、電磁的方法での交付・同意、問い合わせから利用開始までの手順を整理します。自事業所の指定権者が独自の様式や手引きを出している場合は、そちらを優先してください。
1. 運営基準で決まっていること
まず、重要事項説明と契約に関わる規定を、訪問介護の運営基準(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)で確認します。
| 条文 | 内容 | 実務への意味 |
|---|---|---|
| 第8条第1項 | 提供の開始に際し、あらかじめ、利用申込者又はその家族に、重要事項を記した文書を交付して説明し、提供の開始について利用申込者の同意を得る | 説明の相手は本人か家族、同意は本人 |
| 第8条第2項〜第6項 | 申出があれば、承諾を得て、文書に代えて電磁的方法で重要事項を提供できる | メールや閲覧型の仕組みで渡せる |
| 第9条・第10条 | 正当な理由なく提供を拒んではならない。自ら提供が困難な場合は、居宅介護支援事業者への連絡、他の事業者の紹介などを速やかに行う | 断る場合の対応も手順に入れる |
| 第11条・第12条 | 被保険者証で被保険者資格、要介護認定の有無と有効期間を確かめる。認定の申請がされていなければ、申請の援助を行う | 契約の前に資格を確認する |
| 第20条第3項・第4項 | 実施地域外の交通費など、保険給付以外の費用を受け取るときは、あらかじめ内容と費用を説明し、利用者の同意を得る | 保険外の費用も説明と同意が必要 |
| 第24条 | 訪問介護計画は、利用者か家族に説明して利用者の同意を得て作成し、利用者に交付する | 契約後の計画にも説明・同意・交付がある |
| 第29条 | 事業所ごとに運営規程を定める | 重要事項説明書の土台 |
| 第32条 | 重要事項を事業所の見やすい場所に掲示し、原則としてウェブサイトにも掲載する | 説明書・掲示・ウェブの内容をそろえる |
| 第33条第3項 | サービス担当者会議等で利用者の個人情報を用いる場合は利用者の、家族の個人情報を用いる場合は家族の同意を、あらかじめ文書で得る | 個人情報の同意書を契約時にもらう |
| 第34条 | 広告の内容は虚偽又は誇大であってはならない | パンフレットと説明書を一致させる |
通所介護では、保険給付以外に受け取れる費用として、実施地域外の送迎費、食事の提供に要する費用、おむつ代などが定められ、これらもあらかじめ内容と費用を説明し、利用者の同意を得ることになっています(第96条第3項・第5項)。
なお、訪問介護の基準が求めているのは「説明」と「同意」で、契約書の作成までは条文に書かれていません。一方、特定施設入居者生活介護(介護付きの有料老人ホームなど)は、重要事項を記した文書を交付して説明したうえで、入居と介護の提供に関する契約を文書により締結しなければならないと定められています(第178条第1項)。居宅サービスでも、実務では重要事項説明書と契約書をセットで交わすのが一般的で、兵庫県のガイドラインも両方の書き方を示しています。
2. 重要事項説明書に書く事項
運営規程の項目が土台になる
第8条の「運営規程の概要」の運営規程には、次の事項を定めることになっています。
| 訪問介護(第29条) | 通所介護(第100条) |
|---|---|
| 事業の目的及び運営の方針 | 事業の目的及び運営の方針 |
| 従業者の職種、員数及び職務の内容 | 従業者の職種、員数及び職務の内容 |
| 営業日及び営業時間 | 営業日及び営業時間 |
| 指定訪問介護の内容及び利用料その他の費用の額 | 指定通所介護の利用定員 |
| 通常の事業の実施地域 | 指定通所介護の内容及び利用料その他の費用の額 |
| 緊急時等における対応方法 | 通常の事業の実施地域 |
| 虐待の防止のための措置に関する事項 | サービス利用に当たっての留意事項 |
| その他運営に関する重要事項 | 緊急時等における対応方法 |
| 非常災害対策 | |
| 虐待の防止のための措置に関する事項 | |
| その他運営に関する重要事項 |
厚生労働省の解釈通知(平成11年老企第25号)は、訪問介護の重要事項として、運営規程の概要と勤務体制に加えて、事故発生時の対応、苦情処理の体制などを挙げています。令和6年度の改正後の解釈通知では、掲示すべき重要事項の例として、これらに加えて提供するサービスの第三者評価の実施状況(実施の有無、実施した直近の年月日、実施した評価機関の名称、評価結果の開示状況)が示されています。
都道府県のガイドラインが示す項目
具体的な項目は、指定権者が手引きやガイドラインで示していることがあります。兵庫県の「重要事項説明書及び契約書のガイドライン(令和6年版)」は、各サービスに共通して、次のような項目を記載するよう求めています。
| 区分 | 主な項目 |
|---|---|
| 事業者・事業所 | 法人の名称・代表者・所在地・連絡先、事業所の名称・指定事業所番号・所在地・営業日と営業時間、管理者の職氏名と兼務の内容 |
| 事業の内容 | 通常の事業の実施地域(地域外の交通費の有無)、事業の目的と運営方針、従業員の職種・職務内容・常勤非常勤別の人数 |
| サービスと料金 | 提供できるサービスの具体的な内容、介護保険の適用部分とそれ以外に分けた料金と利用者負担、支払方法、償還払いとなる場合の扱い |
| 手順と窓口 | 申込みから提供・支払いまでの手順、相談窓口と担当責任者・開設時間・方法、保険者である市町と国民健康保険団体連合会の相談窓口、担当者の変更の希望への対応 |
| 権利と安全 | 秘密の保持と個人情報の利用、家族等への連絡、記録の保管と閲覧、緊急時の対応、虐待の防止の措置、業務継続計画、感染症の予防とまん延防止の措置 |
| 責任 | 損害賠償の方針(利用者の損害賠償請求権を制限する免責条項を設けない)、損害保険への加入の有無 |
| その他 | 第三者評価の実施状況、利用上の留意事項と担当者の禁止行為、重要事項の変更時の通知と同意確認の方法、説明・交付の日時と場所・署名欄 |
サービスごとの個別事項もあります。たとえば同ガイドラインは、通所介護では施設の概要、加算の対象となるサービスは利用者の選択によること、食費など保険給付の対象外の費用、送迎の範囲と料金、非常災害時の対応を、訪問介護では身体介護・生活援助・通院等乗降介助のうち提供できるサービスの具体的な内容を書くよう示しています。
3. 説明と同意は、誰に、どのように行うか
説明は本人か家族、同意は本人
第8条第1項の書き分けに注意してください。説明は「利用申込者又はその家族」に行い、同意は「利用申込者」から得ます。家族にだけ説明して家族の署名だけをもらう運用は、条文の形と合いません。本人が署名できない事情がある場合の扱い(代筆・代理人)は、書類上どう記録するかを法人で決め、指定権者の手引きも確認してください。
解釈通知が求める説明の方法
解釈通知は、重要事項について「わかりやすい説明書やパンフレット等」の文書を交付して懇切丁寧に説明を行い、同意を得ることとしています。同じ事業者が他の介護保険の事業も行っている場合、パンフレット等を一体的に作成することは差し支えないとされています。同意については、利用者と事業者双方の保護の立場から書面によって確認することが望ましいとされています。
兵庫県のガイドラインが示す配慮
兵庫県のガイドラインは、説明の実務について次の点を示しています。自県で同じ定めがあるとは限りませんが、説明の質を上げる目安になります。
- 高齢者に理解しやすい平易な文章にし、専門用語や外来語には解説を加える。文字は12ポイント以上
- 要求があれば、判断のために重要事項説明書と契約書を事前に交付する
- 視覚や聴覚に障害のある方には、点字や口頭での説明、家族等を通じて十分な理解を得る
- 利用者の判断能力に疑問の余地がない場合を除き、重要事項説明と契約の際には家族(近親者)等が立ち会うことが望ましい
- 説明・交付の日時と場所を記入し、事業者、説明者、利用者、代理人または立会人が署名または捺印する欄を設ける
説明の場で確かめること
- 料金は1回あたり(または1か月あたり)の料金と、利用者の負担額、支払方法を示したか
- 保険給付以外の費用(交通費、食費、おむつ代など)の内容と額を説明し、同意を得たか
- 解約の方法と、事業者から解約する場合の条件を説明したか
- 苦情の窓口(事業所・市町村・国民健康保険団体連合会)を伝えたか
- 個人情報の利用について、本人と家族それぞれの同意を文書で得たか
- 渡した書類の控えと、説明日・説明者の記録を残したか
4. 電磁的方法での交付・同意・契約
重要事項の説明書は、電子でも渡せます。 第8条第2項は、利用申込者や家族から申出があった場合、承諾を得て、文書の交付に代えて重要事項を電磁的方法で提供でき、その場合は文書を交付したものとみなすと定めています。方法は次のとおりです。
| 方法 | 条文 |
|---|---|
| 電子メールなどで送信し、相手のパソコン等のファイルに記録する | 第8条第2項第1号イ |
| 事業者のファイルに記録した重要事項を、相手が通信回線で閲覧し、自分のファイルに記録する | 同号ロ |
| 電磁的記録媒体(USBメモリなど)に記録して交付する | 同項第2号 |
電磁的方法で提供するときの条件もあります。
- 相手がファイルを出力して文書を作れる方法でなければならない(第8条第3項)
- あらかじめ、使う方法の種類とファイルの記録の方式を示し、文書か電磁的方法で承諾を得る(同第5項)
- 相手から電磁的方法での提供を受けない旨の申出があれば、電磁的方法で提供してはならない(同第6項)
さらに第217条第2項は、基準で書面で行うことが規定・想定されている「交付、説明、同意、承諾、締結その他これらに類するもの」について、相手方の承諾を得て、書面に代えて電磁的方法によることができると定めています。個人情報の同意書(第33条第3項)や訪問介護計画の同意・交付(第24条)も、承諾があれば電子で行えます。
兵庫県のガイドラインは、電磁的方法で締結する場合、契約関係を明確にする観点から、書面の署名や記名押印に代えて電子署名を活用することが望ましいとし、「押印についてのQ&A(令和2年6月19日 内閣府・法務省・経済産業省)」を参考にするよう示しています。
電子にするかどうかは、利用者と家族の状況で決めます。承諾の記録を残すこと、紙を希望する方には紙で渡せる運用を並べておくことが前提です。
5. 問い合わせから利用開始までの手順
問い合わせを受けてから利用を始めるまでを、書類の流れで並べると次のようになります。ケアマネジャーからの紹介で始まる場合も、家族から直接問い合わせがある場合も、骨格は同じです。
- 受け付けと受け入れの判断:実施地域・曜日・時間・状態像から受け入れできるかを確認する。正当な理由(現員では応じきれない、実施地域外など)で提供が困難な場合は、居宅介護支援事業者への連絡や他の事業者の紹介を速やかに行う(第9条・第10条、解釈通知)
- 資格の確認:被保険者証で被保険者資格、要介護認定の有無と有効期間を確かめる。認定審査会意見の記載があれば配慮する。申請がまだなら、本人の意思を踏まえて申請を援助する(第11条・第12条)
- ケアマネジャーとの調整:居宅サービス計画での位置付け、利用の曜日・時間を確認する
- 重要事項の説明と同意:重要事項説明書を交付して説明し、本人の同意を得る(第8条)。保険給付以外の費用も説明して同意を得る(第20条・第96条)
- 契約の締結:重要事項説明書の内容と矛盾しない契約書を交わす
- 個人情報の利用の同意:サービス担当者会議等で使う本人・家族の個人情報について、それぞれ文書で同意を得る(第33条第3項)
- 個別サービス計画の作成:訪問介護計画などを居宅サービス計画に沿って作成し、説明・同意・交付する(第24条)
- 利用開始と記録:提供の記録を残し、ケアマネジャーに計画を提出する
兵庫県のガイドラインは、契約書について、重要事項説明書の内容を契約書にも書くか、契約内容の一部として契約書に添付し一体のものとして交付すること、重要事項説明書と矛盾する内容や、利用者が予想できない不利な内容(不意打ち条項)を書かないことを示しています。契約期間は要介護認定の有効期間を満了期間とし、申出がなければ自動更新とする書き方が示されています。
ケアマネジャーから紹介を受ける段階で渡す情報の整え方はケアマネジャーへの営業と情報提供で、家族や病院を含めた経路ごとの情報の整え方は介護事業所の集客で扱っています。重要事項説明書は、そこで渡した資料の内容を約束として書面にするものなので、資料と説明書の料金・実施地域・営業日がずれていないかを必ず照らし合わせてください。
6. 落とし穴
- 運営規程・掲示・ウェブサイトと中身がずれる:重要事項は、事業所内の掲示と、原則としてウェブサイト(法人のホームページ等または介護サービス情報公表システム)への掲載も求められています(第32条、令和6年度改正後の解釈通知)。報酬改定や料金の見直しのたびに、説明書・掲示・ウェブ・パンフレットを同時に直します。
- 家族の署名だけで済ませる:同意は本人から得ます。本人が署名できない場合の代筆や代理人の扱いを決めずに、家族の署名欄だけで運用しないでください。
- 免責条項を入れる:兵庫県のガイドラインは、故意または重大な過失の場合にのみ責任を負うとする規定や、損害賠償額の上限など、利用者の損害賠償請求権を制限する免責条項を設けないよう示しています。
- 事業者からの解約を広く書く:同ガイドラインは、事業者からの解約はやむを得ない場合のみとし、1か月以上の期間を置いて理由を通知することを示しています。受け入れが難しくなったときは、居宅介護支援事業所への連絡や他の事業者の紹介など、第10条の対応をとります。
- 変更時に説明し直さない:料金や営業日が変わったら、通知と同意確認を行います。運営規程を変えた場合は、指定権者への変更の届出が必要かどうかも確認してください。
- 個人情報の同意を後回しにする:サービス担当者会議で情報を使う前に、本人と家族それぞれの同意を文書で得ておく必要があります(第33条第3項)。
7. まとめ
- 重要事項説明書は、提供の開始前に、利用申込者か家族に文書を交付して説明し、本人の同意を得るための書類(指定居宅サービス等基準 第8条第1項、通所介護は第105条で準用)
- 書く事項は、運営規程の項目(第29条・第100条)を土台に、事故発生時の対応、苦情処理の体制、第三者評価の実施状況、保険外の費用、個人情報、解約などを、指定権者のガイドラインに沿って加える
- 同意は書面で確認することが望ましい(解釈通知)。判断能力に疑問があれば家族等の立ち会いを求める
- 申出と承諾があれば、重要事項の提供も同意・締結も電磁的方法で行える(第8条第2項〜第6項、第217条第2項)
- 説明書・契約書・掲示・ウェブサイト・パンフレットの内容を一致させ、変わったら同時に直す
参考資料
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第8条〜第12条・第20条・第24条・第29条・第32条〜第34条・第96条・第100条・第105条・第178条・第217条(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037
- 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(平成11年9月17日老企第25号)
- 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(平成11年9月17日老企第25号)(抄)」新旧対照表(令和6年度改正):https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001221584.pdf
- 兵庫県「重要事項説明書及び契約書のガイドライン(令和6年版)」:https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf27/documents/jyuuyoujikouguideline.pdf
制度の要件は改正や報酬改定で変わります。実際の様式や記載事項は、必ず管轄の指定権者が公表している最新の資料で確認してください。