介護事業所の電話には、新規の利用の相談、ケアマネジャーからの空き状況の確認、利用中の方のご家族からの連絡、苦情、市町村や病院からの照会が、同じ番号でかかってきます。受けた職員が「あとで折り返します」と答えたまま、誰がいつ返すのかが決まっていないと、相談は他の事業所へ移り、苦情はこじれます。

電話の受け方そのものを決めた法令はありませんが、電話で受ける用件には運営基準の規定がかかります。正当な理由なく提供を拒まないこと(提供拒否の禁止)、受けられないときに代わりの手配をすること、苦情を受け付けて記録すること、利用者とご家族の秘密を守ることです。

この記事では、運営基準と個人情報保護委員会・厚生労働省の個人情報のガイダンスにもとづいて、用件ごとに「返す時刻」を決め、受付票に残し、週に1回見直す手順を整理します。条文は訪問介護(指定居宅サービス等基準)のものを示しますが、通所介護などほかのサービスにも、同じ趣旨の規定がサービスごとに置かれています(準用規定を含む)。


1. 電話で受ける用件と、かかってくる規定

まず、事業所の電話に届く用件を5つに分けます。用件によって、急ぐ度合いも、運営基準上の扱いも違います。

用件主な相手かかってくる規定(訪問介護の例)
新規の利用の相談ご本人・ご家族・ケアマネジャー提供拒否の禁止(第9条)、提供困難時の対応(第10条)
空き状況・受け入れ条件の確認ケアマネジャー・病院の退院支援の担当者・地域包括支援センター同上
利用中の方についての連絡ご家族・ケアマネジャー秘密保持等(第33条)
苦情・要望ご本人・ご家族苦情処理(第36条)、記録の整備(第39条)
行政・関係機関からの照会市町村・国民健康保険団体連合会苦情処理(第36条第3項〜第6項)

このほか、サービスの提供中に事故が起きたときは、市町村・ご家族・居宅介護支援事業者等への連絡が求められます(第37条)。事故の連絡は「返す時刻」の管理ではなく、事業所から先にかける電話なので、この記事では扱いません。

提供拒否の禁止と、受けられないときの手配

運営基準は、正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないと定めています(第9条)。通常の事業の実施地域などを勘案して、自ら適切なサービスを提供することが困難なときは、その利用申込者の居宅介護支援事業者への連絡、適当な他の事業者の紹介その他の必要な措置を速やかに講じなければなりません(第10条)。

電話で「いまは受けられません」と答えて終わると、この「速やかな措置」が抜けます。受けられない電話こそ、誰にどう連絡したかを残す必要があります。

苦情の受付と記録

苦情に迅速かつ適切に対応するため、苦情を受け付ける窓口を設置する等の措置を講じ(第36条第1項)、苦情を受け付けた場合は、その内容等を記録しなければなりません(同第2項)。この記録は、完結の日から2年間の保存が求められています(第39条第2項第5号)。自治体の条例で保存期間を長く定めている場合があるので、指定権者の条例も確かめます。

電話で受けた苦情は、受けた職員のメモのままにせず、苦情の記録に移します。


2. 用件ごとに「返す時刻」を決める

「折り返します」は、いつ・誰が返すかを約束して初めて意味を持ちます。用件ごとに、返す時刻の目安と担当を決めておきます。

次の表は決め方の例です。法令で決まっている時刻ではありません。事業所の営業時間・人数・相談員の動き方に合わせて決め、決めたものを電話の近くに貼ります。

用件返す時刻の目安(例)返す担当(例)返すときに手元に置くもの
新規の利用の相談受けた日の営業時間内生活相談員・サービス提供責任者受け入れ条件の一覧(曜日・時間・実施地域・対応できる状態像)
空き状況の確認受けた日の営業時間内同上曜日・時間帯ごとの空きの表(最新の日付入り)
利用中の方についての連絡用件による(体調の急変はすぐ)担当のサービス提供責任者・管理者本人が説明を認めた家族等の一覧
苦情・要望責任者から当日中に一報管理者(苦情受付の担当)苦情の記録の様式
行政・関係機関からの照会照会で示された期限まで管理者照会の文書・該当する記録

決めるときの考え方は3つです。

  1. 新規の相談と空き確認は、その日のうちに返す。ケアマネジャーは、利用者から複数の事業所の紹介を求められることがあり(指定居宅介護支援等基準 第4条第2項)、返事の早い事業所から調整が進みます。空きが無い場合も、「無い」と返すこと自体が相手の次の手配を早めます
  2. 苦情は、解決の時刻ではなく「一報の時刻」を決める。内容の確認や改善には日数がかかることがあります。受けた日のうちに責任者から、受け付けたこと・確認して返す予定の日を伝えます
  3. 約束した時刻に返せないときは、その時刻の前に一度連絡する。「まだ確認中で、何時に返します」と伝えるだけで、相手の待ち方が変わります

3. 受付票に残す項目

返す時刻を決めても、記録が無いと守れているかが分かりません。電話を受けたら、次の項目を受付票(紙でも表計算でもかまいません)に残します。

項目書き方の例
受けた日時9月26日 10:15
受けた職員事務(〇〇)
相手の区分ご本人/ご家族/ケアマネジャー/病院/地域包括支援センター/行政/その他
相手の氏名・所属・連絡先〇〇居宅介護支援事業所 〇〇さん、電話番号
用件の区分新規の相談/空き確認/利用中の連絡/苦情・要望/照会
用件の内容火・木の午前、身体介護30分、退院後すぐの開始を希望
返す担当と約束した時刻サ責(〇〇)、本日15時まで
実際に返した日時9月26日 14:40
結果受け入れ可→見学の日程調整/受け入れ不可→理由と紹介先・ケアマネへの連絡
苦情に当たるか当たる場合は苦情の記録に移した日
事業所を知った経路ケアマネの紹介/情報公表システム/ホームページ/地図検索/病院 など

最後の「事業所を知った経路」は、運営基準の求めではありませんが、どの経路から相談が来ているかを数えるために残します。経路ごとの情報の整え方は「介護事業所の集客|ケアマネ・家族・病院に届く情報の整え方」で扱っています。

受付票には利用者やご家族の個人情報が入ります。置き場所と見られる人を決め、ほかの記録と同じように管理します。


4. 受け入れられない電話の返し方

受け入れられない相談への返し方は、第9条・第10条にそのまま関わります。電話では次の順で伝えます。

  1. 受けられない理由を具体的に伝える。「現在の人員では火・木の午前に空きが無い」「通常の事業の実施地域の外にあたる」のように、事実で伝えます。「いっぱいです」だけでは、相手は条件を変えて相談し直せません
  2. 受けられる条件があれば示す。「水・金の午後なら可能」「翌月の第2週から空く見込み」など、変えれば受けられる条件を伝えます
  3. 代わりの手配をする。その利用申込者のケアマネジャーへの連絡、他の事業者の紹介など、第10条の「必要な措置」を行い、何をしたかを受付票に残します
  4. 空きが出たら連絡するかを決める。連絡する約束をした場合は、受付票に「空きが出たら連絡」と残し、空きの表を更新するときに見直します

ケアマネジャーへの日ごろの情報提供(空き状況の伝え方や、紹介が続く事業所の共通点)は「ケアマネジャーへの営業|紹介が続く事業所の情報提供」にまとめています。


5. ご家族や第三者から、利用者のことを聞かれたとき

電話でいちばん迷いやすいのが、利用者の様子や予定を聞かれたときです。

運営基準は、従業者が正当な理由なく業務上知り得た利用者やご家族の秘密を漏らしてはならないとし(第33条第1項)、サービス担当者会議等で利用者の個人情報を用いる場合は、あらかじめ文書で同意を得ておくことを求めています(同第3項)。

個人情報保護委員会・厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」は、介護サービスの提供に必要な利用目的の例に「家族等への心身の状況説明」を挙げたうえで、本人以外の者に説明を行う場合は、あらかじめ本人に説明を行う家族等の対象者を確認し、同意を得ることが望ましいとしています。本人から申し出があれば、実際に世話をしている親族などを対象に加えたり、特定の家族に限ったりすることもできる、とされています。

電話の対応は、この考え方から逆算して決めます。

  • 契約のときに、説明してよい家族等を本人と確かめて記録する。名前・続柄・連絡先を残し、電話を受ける職員が見られるようにしておきます
  • 一覧に無い相手や、相手を確かめられない電話では、心身の状況や予定を答えない。「確認して、ご登録の連絡先へ折り返します」と伝え、登録してある番号に折り返すのが確かめ方の一つです
  • 「利用しているかどうか」も個人情報になりうる。知人や業者を名乗る電話で「〇〇さんはそちらを利用していますか」と聞かれても、答える前に相手と用件を確かめます
  • 市町村・病院・ケアマネジャーからの照会は、利用者へのサービス提供に必要な連携であれば、事業所の利用目的に含めて示しておきます。照会の相手と用件は、受付票に残します

6. 不在のとき・営業時間の外

電話を取れない時間は必ずあります。取れなかった電話を取りこぼさないために、次を決めておきます。

  • 営業時間の外の案内を、運営規程とそろえる。営業日と営業時間は、運営規程に定める事項です(第29条第3号)。留守番電話の案内、ホームページ、介護サービス情報公表システムに載せる営業時間を、運営規程と同じにします。運営規程の営業日・営業時間を変えるときは変更届の対象になります(「介護事業所の変更届|届け出る項目と10日以内の期限」)
  • 重要事項はウェブサイトにも載る。運営基準は、重要事項を原則としてウェブサイトに掲載することを求めています(第32条第3項)。載せた電話番号と受付時間が、実際に電話を取れる時間と合っているかを確かめます
  • 留守番電話と不在着信を、朝いちばんに受付票へ移す。誰が確認するかを決め、移した時点から「返す時刻」を数えます
  • 利用中の方の緊急の連絡先は、代表番号と分けて案内する。緊急時等における対応方法は運営規程の事項です(第29条第6号)。夜間・休日の連絡先を重要事項説明書でどう案内しているかを確かめ、代表番号の留守番電話でも同じ案内をします

7. 週に1回、受付票から見る数字

受付票を1週間分ためたら、次の5つを数えます。

見る数字見方
用件ごとの件数どの用件が多いかで、電話の近くに置くもの(空きの表・受け入れ条件)を決める
約束した時刻までに返せた割合返せなかった用件と時間帯を見て、担当や受ける人を直す
返すまでにかかった時間新規の相談と空き確認で、受けてから返すまでの時間を見る
受け入れられなかった件数と理由曜日・時間帯・状態像の偏りが分かれば、人員配置や受け入れ条件の見直しにつながる
利用開始につながった件数と経路どの経路からの相談が利用につながっているかを見る

「受け入れられなかった理由」が同じ曜日・時間帯に偏っているなら、その時間帯の人員の厚みを変えるだけで、断っていた相談を受けられるかもしれません。電話の記録は、稼働率を上げるための材料にもなります。


8. つまずきやすい点

  • 「折り返します」に時刻が付いていない。受けた職員は折り返すつもりでも、担当に伝わらないまま翌日になります。約束した時刻と担当を、必ず受付票に書きます
  • 受けられない電話を記録しない。断った相談ほど記録が残らず、代わりの手配をしたか、どの時間帯の需要を逃しているかが分からなくなります
  • 苦情を「要望」として流す。苦情に当たるかどうかで迷ったら、苦情として記録に移し、責任者が判断します。記録は後から整理できますが、残していない記録は戻せません
  • 電話で答えすぎる。ご家族を名乗る相手でも、確かめられないうちは心身の状況や予定を答えません。本人が認めた家族等の一覧を、電話を受ける人が見られるようにしておきます
  • 案内している営業時間と、実際に電話を取れる時間がずれている。ホームページ・情報公表システム・地図検索・留守番電話の案内を、運営規程と同じにします

9. まとめ

  • 事業所の電話には、新規の相談・空き確認・利用中の連絡・苦情・照会が同じ番号で届く。用件ごとに急ぐ度合いと運営基準上の扱いが違う
  • 正当な理由なく提供を拒まず(指定居宅サービス等基準 第9条)、受けられないときはケアマネジャーへの連絡や他の事業者の紹介などを速やかに行う(第10条)
  • 苦情は受け付けて内容等を記録し(第36条第2項)、完結の日から2年間保存する(第39条第2項第5号)。条例で長く定める自治体もある
  • 本人以外への説明は、あらかじめ本人に対象の家族等を確認して同意を得ることが望ましい(個人情報保護委員会・厚生労働省の個人情報ガイダンス)。確かめられない相手には答えず、登録した連絡先へ折り返す
  • 用件ごとに返す時刻と担当を決め、受付票に残し、週に1回、返せた割合・かかった時間・断った理由を見直す

参考資料