処遇改善計画書は、「加算でいくら入り、それ以上をどう賃金改善に回すか」と、区分ごとの要件を満たしていることを示す届出書類です。計画書を出さなければ加算は算定できず、計画どおりに賃金改善をしなければ、実績報告で返還を求められます。

令和8年度は、加算の対象が介護職員から介護従事者に広がり、生産性向上・協働化に取り組む事業所の上乗せ区分(Ⅰロ・Ⅱロ)が新設されたため、様式も4・5月分と6月以降分の個票に分かれています。この記事では、厚生労働省の令和8年度の通知と様式にもとづき、計画書の作り方を順に整理します。


1. 計画書の構成

様式内容
基本情報入力シート提出先、法人の情報、書類作成担当者、対象事業所の一覧(事業所番号、サービス、1月あたりの総単位数、単価)。入力すると各様式に転記される
別紙様式2-1(総括表)加算の見込額と賃金改善の見込額、要件ごとの状況、職場環境等要件の取組、確認事項と代表者の誓約
別紙様式2-2(個票・4、5月)事業所ごとの令和8年4・5月の区分と加算の見込額、要件の状況
別紙様式2-3(個票・6月以降)事業所ごとの令和8年6月以降の区分と加算の見込額、要件の状況

複数の事業所がある法人は、法人単位で一括して作ってよいとされています。その場合も、事業所ごとの指定権者それぞれに提出します。提出先ごとの計画書は、「提出先」の欄以外は同じ内容で構いません。

様式は原則として都道府県等が変更を加えないこと、押印は不要であること、根拠資料を届出のときに一律に添付させないことが、通知で定められています。


2. 加算の見込額の計算

個票では、事業所ごとに次の式で加算の見込額を出します。

加算の見込額 = 1月あたりの総単位数(処遇改善加算を除く)×1単位の単価×加算率×算定する月数

項目出し方
1月あたりの総単位数前年1月から12月の12か月の総単位数(各種加算・減算を含む)を12で割るなど、適切な方法で推計する
1単位の単価地域区分とサービスに応じた単価(10円〜11.40円)
加算率サービスと区分ごとの率(令和8年4・5月と6月以降で違う)
算定する月数6月以降の個票は、通常は令和8年6月から令和9年3月までの10か月

介護予防サービス、短期利用型のサービス、総合事業も、算定する場合は別の行として書きます。記入漏れがないかを確かめる欄があります。加算率と単価の考え方は介護職員等処遇改善加算の一覧で整理しています。

あわせて、月額賃金改善要件の確認のため、加算Ⅳを算定した場合の見込額の2分の1も事業所ごとに出します。


3. 賃金改善の見込額の出し方

総括表の「賃金改善計画」では、①令和8年度の加算の見込額(個票の合計)と、②令和8年度の賃金改善の見込額を書きます。②は①以上でなければなりません。

積み上げの手順

  1. 対象の職員と項目を決める:賃金改善の対象とする職員(介護職員、その他の職種)と、改善する項目(基本給、手当、賞与など。退職手当は除く)を特定します。
  2. 職員ごとに改善額を出す:加算で行う昇給、手当、賞与の上乗せの額を、年度の見込みで出します。
  3. 事業主負担の増加分を足す:賃金改善に伴う法定福利費等(社会保険料など)の事業主負担の増加分を含めることができます。
  4. 加算の見込額と比べる:②が①を下回る場合は、配分や改善額を見直します。

「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」から賃金に充てた額は、②に含めません。

賃金改善額に含めるもの・含めないもの

厚生労働省のQ&A(令和8年3月13日)は、次のように示しています。

項目扱い
法定福利費の事業主負担の増加分含める(健康保険、介護保険、厚生年金、児童手当拠出金、雇用保険、労災保険。合理的な方法による概算でよい)
外形標準課税の付加価値額の増加分含める(賃金の上昇分に応じた法人事業税の増加分)
任意加入の制度の掛金の増加分含めない(退職手当共済の掛金など)
キャリアパス要件・職場環境等要件の取組の費用含めない(研修費など、賃金の改善ではないもの)

賃金改善額は、加算で改善した後の賃金水準と、加算を算定しない場合の賃金水準(原則として、初めて処遇改善の加算や交付金等を算定した年度の前年度の水準)を比べて出します。職員構成が大きく変わったなどで比べにくい場合は、加算を除いた総単位数の見込みにもとづく賃金計画で試算するなどの方法も認められています。

支給の時期

Q&Aは、例えば6月分の加算を、①6月の労働時間にもとづき6月中に見込額で払う、②7月中に払う、③6月分の報酬が振り込まれる8月中に払う、のいずれかから事業者が選ぶとしています。配分のあり方は、あらかじめ労使の合意を得るよう努めます。

令和8年度に増えた加算額の扱い

通知は、令和7年度と比べて令和8年度に増えた加算額(新規の算定や上位区分への移行、加算率の引上げによる増加分)について、過去の賃金改善の実績に関わらず、増えた額に相当する賃金改善を新たに行うよう求めています。その新たな賃金改善は、ベースアップ(賃金表の改訂により基本給や毎月決まって支払う手当を一律に引き上げること)で行うのが基本です。賃金体系が整備途上などで難しい場合は、手当や一時金を組み合わせても構いません。

月額賃金改善要件の確認

総括表の3(1)では、加算Ⅳ相当の見込額の2分の1と、賃金改善の見込額のうち基本給等(基本給、毎月決まって支払う手当)で行う額を比べ、後者が前者以上であることを示します。既に満たしている事業所は新たな取組は不要で、手当や一時金の一部を基本給等に付け替えて満たすこともできます。


4. 職種間の配分の決め方

考え方通知の内容
配分の自由介護職員、特に経験・技能のある介護職員の処遇改善が重要であることに留意しつつ、事業所の判断で柔軟に配分できる。Q&Aは、対象には介護職員以外の全職種が含まれるとしている
偏りの禁止一部の職員への集中や、同じ法人の一部の事業所だけへの集中など、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わない
賃金水準特定した項目を含め、賃金水準を下げない(特別事情届出書を出す場合を除く)

配分を決めるときは、職種ごとの人数と今の賃金水準を並べ、改善後に職種間・職位間の賃金の逆転が起きないかを確かめます。キャリアパス要件Ⅳ(年額440万円以上の職員1人以上)を満たす区分を取る場合は、その職員の改善後の見込額も確かめます。


5. 要件の記入と確認事項

総括表の3では、区分に応じて次の要件の状況を書きます。

  • 月額賃金改善要件
  • キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ(440万円の職員を設定できない場合はその理由)、Ⅴ
  • 職場環境等要件(実施する取組にチェック。Ⅰ・Ⅱ系は、取組の内容をどこで公表するか)
  • 令和8年度特例要件(ロの区分を取る場合など)

特例要件を満たす事業所は、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳや職場環境等要件について、令和9年3月末までに整備することを誓約する欄があります。要件の内容は処遇改善加算のキャリアパス要件で整理しています。

確認事項

総括表の4では、次の事項を確かめてチェックし、代表者が記載内容に間違いがないことと資料の保管を誓約します。

確認事項証明する資料の例
加算の額を全額、職員の賃金改善に充てる。加算による改善以外の部分で賃金水準を下げない就業規則、給与規程、給与明細
令和7年度より増えた加算額について、新たな賃金改善を行う就業規則、給与規程、給与明細
期間中に事業所を休廃止した場合は、一時金等で職員に配分する—
キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲの書面を作り周知した(未整備なら令和9年3月末までに整備する)就業規則、給与規程、資質向上のための計画
労働に関する法令に違反して罰金以上の刑に処せられていない—
労働保険料の納付が適正に行われている労働保険関係成立届、確定保険料申告書
計画書の内容と賃金改善の方法を、全ての職員に周知した会議録、周知文書

様式には、虚偽の記載や求めに応じて書類を出せない場合は、介護報酬の返還や指定の取消しとなる場合があると明記されています。


6. 提出の期限

手続き原則令和8年度の扱い
処遇改善計画書その年度に初めて加算を算定する月の前々月の末日まで4・5月分と6月以降分をあわせて令和8年4月15日まで。6月に加算が新設されたサービスだけの事業者などは6月15日まで
体制等の届出居宅系は算定を始める月の前月15日まで、施設系は1日まで令和8年4月から新規・区分変更の場合は4月1日(指定権者は4月15日としてもよい)

年度の途中で新たに加算を取る場合や、区分を変える場合は、変更届出書と計画書を、居宅系は算定を始める月の前月15日まで、施設系は1日までに出します。計画書と根拠資料は2年間保存します。


7. 職員への周知

通知は、賃金改善の方法などを、計画書を使うなどして職員に周知し、就業規則等の内容も周知するよう求めています。また、職員から賃金改善について問い合わせがあった場合は、その職員の賃金改善の内容を書面を使うなど分かりやすく回答するよう求めています。

周知は、全体への説明会と、給与の改定を知らせる書面の配付を組み合わせると、職員ごとの改善額まで伝えられます。説明した日、方法、資料を記録しておきます。


8. 作成の手順

  1. 対象事業所と総単位数を集める:事業所ごとの前年1〜12月の総単位数、地域区分の単価を集めます。
  2. 区分を決める:キャリアパス要件・職場環境等要件・特例要件の状況から、事業所ごとに取る区分を決めます。
  3. 加算の見込額を出す:個票で、総単位数×単価×加算率×月数を出します。
  4. 賃金改善を設計する:職員ごとの改善額を積み上げ、加算の見込額以上、基本給等の改善が加算Ⅳ相当の2分の1以上になるようにします。
  5. 要件と確認事項を書く:総括表で要件の状況と取組にチェックし、確認事項と誓約を書きます。
  6. 提出と周知:期限までに指定権者に出し、職員に周知して、根拠資料を保管します。

落とし穴

  • 総単位数に介護予防や短期利用、総合事業の事業所を入れ忘れる
  • 賃金改善の見込額が、加算の見込額をわずかに下回っている
  • 令和8年度に増えた加算額を、過去の独自の昇給で賄ったことにしている
  • 賃金改善を一部の職員や一部の事業所に集中させている
  • 計画書を出したが、職員への周知の記録がない

チェックリスト

  • 対象事業所(予防・短期利用・総合事業を含む)を全て書いた
  • 賃金改善の見込額が加算の見込額以上になっている
  • 基本給等の改善額が、加算Ⅳ相当の見込額の2分の1以上になっている
  • 配分に著しい偏りがなく、職種間の賃金の逆転がない
  • 期限までに全ての指定権者に出し、職員に周知した

9. まとめ

  • 計画書は、基本情報入力シート、総括表、4・5月と6月以降の個票でできている
  • 加算の見込額は、総単位数×単価×加算率×月数。総単位数は前年1〜12月の平均などで推計する
  • 賃金改善の見込額は加算の見込額以上。令和8年度に増えた分は、ベースアップを基本に新たに改善する
  • 配分は事業所の判断で柔軟に決められるが、著しい偏りは不可
  • 令和8年度の計画書は4月15日まで(新設サービスだけの事業者などは6月15日まで)。計画書と根拠資料は2年間保存する

年度の終わりの実績報告は処遇改善加算の実績報告で整理しています。様式は厚生労働省の処遇改善加算のページからダウンロードでき、提出先と方法は指定権者の案内で確かめてください。


参考資料