処遇改善加算は、計画書を出して算定し、年度が終わったら実績報告で「加算額以上の賃金改善を行ったこと」を示して完結します。実績報告を出さない、または賃金改善額が加算額に届いていないと、加算の返還の対象になります。
令和8年度は、加算の区分が年度の途中(6月)で変わり、令和9年3月末までの整備を誓約して算定した事業所も多いため、実績報告で確かめることが例年より増えます。この記事では、厚生労働省の令和8年度の通知・様式とQ&Aにもとづき、実績報告の進め方を整理します。
1. 期限と提出先
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期限 | 各事業年度の最終の加算の支払いがあった月の翌々月の末日まで |
| 令和8年度分 | 令和9年3月分の加算の支払いが令和9年5月のため、通常は令和9年7月31日 |
| 提出先 | 処遇改善計画書を出した指定権者(都道府県・市町村)。事業所ごとの指定権者それぞれに出す |
| 様式 | 別紙様式3-1(総括)、別紙様式3-2(事業所ごとの個票)。基本情報入力シートは、紙で出す場合は提出不要 |
| 保存 | 実績報告書と根拠資料を2年間保存 |
法人単位でまとめて作ることができます。個票に書く事業所は、計画書の個票に書いた事業所と一致させます。
2. 加算額と賃金改善額を比べる
別紙様式3-1の2(1)では、①令和8年度の加算額と、②令和8年度の賃金改善額を書きます。②が①以上であることが求められます。
加算額(①)
事業所ごとの加算の総額は、国民健康保険団体連合会から届く「介護職員等処遇改善加算総額のお知らせ」と「介護職員等処遇改善加算内訳のお知らせ」にもとづいて書きます。計画書の見込額ではなく、実際に支払われた額です。
賃金改善額(②)
様式は、具体的な計算方法は問わないとしつつ、各職員に対して加算を原資として行った賃金改善額を積み上げるなどの適切な方法で出すよう求めています。
| 含めるもの | 含めないもの |
|---|---|
| 加算で行った昇給、手当、賞与などの改善額(退職手当を除く) | キャリアパス要件・職場環境等要件の取組の費用(研修費など) |
| 賃金改善に伴う法定福利費の事業主負担の増加分(概算でよい) | 任意加入の制度の掛金の増加分(退職手当共済など) |
| 賃金の上昇分に応じた外形標準課税の付加価値額の増加分 | 「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」から賃金に充てた額 |
下回ったとき
Q&Aは、賃金改善額が加算額を下回った場合は算定要件を満たさないものとして返還の対象になるとしたうえで、不足する分を賞与などの一時金として職員に追加で配分すれば、返還を求めない取扱いとしてもよいとしています。年度末の給与や賞与の前に、加算額の見込みと改善額の累計を突き合わせておくと、不足に早く気づけます。
事業所を年度の途中で廃止する場合は、通常の支給の時期に関わらず、最終の賃金の支払いまでに加算額以上の賃金改善を行う必要があります(一時金による精算も可)。改善できなかった月の加算は返還の対象です。
3. 賃金水準を下げていないことを確かめる
別紙様式3-1の2(2)は、加算による改善以外の部分で賃金水準を下げていないことを確かめる欄です。
| 欄 | 内容 |
|---|---|
| ① 令和8年度の加算の影響を除いた賃金額 | 令和8年度の賃金の総額から、加算による賃金改善額や、支援事業から賃金に充てた額を除いた額 |
| ② 令和7年度の加算と独自の賃金改善の影響を除いた賃金額 | 令和7年度の賃金の総額から、令和7年度の加算の総額、補助事業から人件費に充てた額、独自の賃金改善額を除いた額 |
①が②を下回らないことが求められます。令和7年度の加算の総額は、国保連からのお知らせにもとづいて書きます。
職員が入れ替わった場合
ベースダウン(賃金表の改訂による一律の引下げ)をしていないのに、職員の減少や入れ替わり(勤続の長い職員が退職し、新卒者を採用したなど)で①が②を下回る場合、Q&Aは②の額を調整してもよいとしています。例えば、退職した人は前年度に在籍していなかったものと仮定し、新しく採用した人は同じ職で同程度の勤続の職員が前年度に在籍していたものと仮定して、前年度の賃金総額を推計し直します。
賃金水準を下げた場合
経営の悪化などで賃金全体の水準を下げた場合は、特別事情届出書が必要です。一部の賃金項目が下がっても、賃金全体の水準が下がっていなければ届出は不要ですが、一部の職員の賃金を下げることは不利益変更に当たるため、合理的な理由と労使の合意が必要です。
4. 令和8年度に増えた加算額の新たな改善
別紙様式3-1の2(3)では、令和7年度と比べて増えた令和8年度の加算額以上の、新たな賃金改善額を書きます。通知は、新規の算定や上位区分への移行、加算率の引上げで増えた加算額について、過去の賃金改善の実績に関わらず、新たに賃金改善を行うよう求めています。
令和7年度の独自の賃金改善額(加算の配分以外に事業所が独自に行った改善)を2(2)に計上する場合は、2(4)の欄に、具体的な取組の内容と算定の根拠を書きます。
5. 要件の報告
別紙様式3-1の3では、区分ごとの要件を満たしたことを報告します。
| 要件 | 報告すること |
|---|---|
| 月額賃金改善要件 | 加算Ⅳ相当の加算額の2分の1と、基本給等(基本給、毎月決まって支払う手当)で行った改善額 |
| キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ | 任用要件・賃金体系の整備と周知、研修の計画と具体的な取組の内容 |
| キャリアパス要件Ⅲ | 経験・資格・定期の評価のうち、設けた昇給の仕組み |
| キャリアパス要件Ⅳ | 改善後の賃金が年額440万円以上の人数。設定できない場合はその理由 |
| 職場環境等要件 | 実施した取組 |
| 令和8年度特例要件 | 誓約した事業所は、実績報告書の提出までに対応したこと |
要件の内容は処遇改善加算のキャリアパス要件で整理しています。
誓約した要件の報告
計画書で、令和9年3月末までにキャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳや職場環境等要件を整備すると誓約した事業所は、期限までに整備し、実績報告書でその旨を報告します。ケアプランデータ連携システムの利用を誓約した場合は、加入だけでなく利用の実績を報告する必要があります。
Q&Aは、特例要件の対応について一律に資料の提出は求めないとしつつ、次のような根拠資料を用意し、求めがあれば速やかに出すよう示しています(保存は2年間)。
| 要件 | 根拠資料の例 |
|---|---|
| ケアプランデータ連携システムを利用している | データの送信・受信の記録が分かる画面の写し |
| 生産性向上推進体制加算Ⅰ・Ⅱを算定している | 体制届出 |
| 社会福祉連携推進法人に所属している | 受理された社会福祉連携推進認定の申請書 |
6. 保存する根拠資料
| 資料 | 使う場面 |
|---|---|
| 賃金台帳、給与明細、勤務記録 | 職員ごとの賃金改善額の積み上げ、賃金総額の算出 |
| 就業規則、賃金規程、キャリアパスの規程 | キャリアパス要件Ⅰ・Ⅲの根拠 |
| 研修の計画と実施の記録 | キャリアパス要件Ⅱの根拠 |
| 国保連の処遇改善加算の総額・内訳のお知らせ | 加算額の根拠 |
| 法定福利費の計算の根拠 | 事業主負担の増加分 |
| 労働保険の書類(成立届、確定保険料申告書) | 労働保険の加入の確認 |
| 職員への周知の記録(会議録、周知文書) | 計画書と賃金改善の方法の周知 |
様式には、虚偽の記載や、求めに応じて書類を出せない場合は、介護報酬の返還や指定の取消しとなる場合があると明記されています。加算の要件は運営指導でも確かめられます(運営指導でよく指摘される項目)。
7. 進め方
- 年度の途中で突き合わせる:四半期ごとに、国保連のお知らせの加算額と、支給した改善額の累計を比べます。
- 年度末に不足を埋める:不足が見込まれるときは、賞与などの一時金で追加の配分を決めます。
- 5月の支払いを待って加算額を確定する:令和9年3月分の加算の支払い(5月)で年度の加算額が確定します。
- 賃金総額を出す:令和8年度と令和7年度の賃金総額を出し、職員の入れ替わりがあれば調整します。
- 要件と誓約の対応を確かめる:誓約した要件の整備と、特例要件の利用・算定の実績を確かめます。
- 期限までに出し、保存する:7月31日までに全ての指定権者に出し、根拠資料を2年間保存します。
落とし穴
- 計画書の見込額のまま加算額を書き、国保連のお知らせの実額と合っていない
- 研修費など、賃金ではない費用を賃金改善額に入れている
- 誓約した要件を、令和9年3月末までに整備していない
- ケアプランデータ連携システムに加入しただけで、利用の実績がない
- 退職・採用で賃金総額が下がったのに、調整の根拠を残していない
チェックリスト
- 加算額を国保連のお知らせの実額で書いた
- 賃金改善額が加算額以上になっている(不足は一時金で配分した)
- 加算による改善以外の部分で賃金水準を下げていないことを確かめた
- 令和8年度に増えた加算額以上の新たな改善を行った
- 誓約した要件を整備し、根拠資料を2年間保存する準備ができている
8. まとめ
- 実績報告は、最終の加算の支払いがあった月の翌々月の末日まで。令和8年度分は通常、令和9年7月31日
- 加算額は国保連のお知らせの実額、賃金改善額は職員ごとの積み上げで出し、改善額が加算額以上であることを示す
- 下回った場合は返還の対象。不足分を一時金で追加配分すれば返還を求めない取扱いが認められている
- 加算以外の部分で賃金水準を下げていないこと、令和8年度に増えた加算額の新たな改善も報告する
- 誓約した要件は令和9年3月末までに整備し、根拠資料とあわせて2年間保存する
計画書の作り方は処遇改善計画書の書き方、区分と加算率は介護職員等処遇改善加算の一覧で整理しています。提出の方法は指定権者の案内で確かめてください。
参考資料
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(老発0313第6号 令和8年3月13日、別紙様式を含む):https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/6_tsuuchi_kihontekikangaekata_jimushoritejun.pdf
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年3月13日):https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/7_Q&A_shoguukaizen_ver1.pdf
- 厚生労働省「介護職員の処遇改善 加算の申請方法・申請様式」:https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/apply.html