介護報酬の改定は、3年に1度の定期の改定のほか、令和8年度のように期中に行われることもあります。改定の年は、審議報告から告示・通知、Q&A、施行までが短く、加算の届出、利用者への説明、請求ソフトの更新を並行して進める必要があります。準備が遅れると、取れるはずの加算を1〜2か月取り逃したり、利用者への説明が施行に間に合わなかったりします。

この記事では、令和8年度の期中改定と、令和6年度改定の留意事項通知をもとに、改定の年に事業所がやることを時系列で整理します。


1. 改定の流れ

段階内容令和8年度の例
方針政府の経済対策・予算編成で改定の方向と改定率が決まる総合経済対策(令和7年11月21日閣議決定)、大臣折衝で改定率+2.03%
審議報告社会保障審議会介護給付費分科会が改定の内容をまとめる令和8年度介護報酬改定に関する審議報告(令和7年12月23日)
概要改定の概要・加算率が示される分科会 第253回 資料1(令和8年1月16日)
告示・通知単位数の告示、留意事項通知、処遇改善加算の通知が出る処遇改善加算の通知(老発0313第6号、令和8年3月13日)
Q&A解釈が示される。施行の後にも追加される介護保険最新情報で順に配信
施行新しい単位数・要件の適用処遇改善加算は6月、基準費用額(食費)は8月

令和8年度の改定は、令和9年度の定期の改定を待たずに行われた期中改定です。改定率+2.03%の内訳は、処遇改善分+1.95%、基準費用額(食費)の引上げ分+0.09%とされています。

令和8年度改定の中身

  • 処遇改善加算の拡充(6月から):対象を介護職員から介護従事者に広げ、生産性向上・協働化に取り組む事業所の上乗せ区分(Ⅰロ・Ⅱロ)を新設。訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援・介護予防支援に加算を新設
  • 基準費用額(食費)の引上げ(8月から):介護保険施設等の食費の基準費用額を1日1,445円から1,545円へ100円引上げ。負担限度額は、第3段階①が650円から680円へ、第3段階②が1,360円から1,420円へ引上げ(第1・第2段階は据え置き)

処遇改善加算の区分と加算率は介護職員等処遇改善加算の一覧で整理しています。


2. 改定の年にやること

情報を集める

  1. 改定の概要と算定構造を読む:自事業所のサービスの基本報酬、加算、減算、基準の変更を一覧にします。
  2. 告示・留意事項通知の改正を確かめる:算定要件の細部は通知にあります。新旧対照表で変わった箇所を拾います。
  3. Q&Aを追う:施行の後にも追加されます。介護保険最新情報の配信を定期的に確かめます。
  4. 指定権者の案内を確かめる:届出の様式・締切・提出方法は、都道府県・市町村の案内で示されます。

収支への影響を試算する

変わる加算と基本報酬を、直近の利用実績に当てはめて、月の収入の増減を出します。処遇改善加算は、増えた加算額を賃金改善に充てる必要があるため、収入の増加と賃金改善の支出を対にして試算します。

加算を届け出る

改定で新しく取る加算、区分を変える加算は、体制の届出が必要です。留意事項通知は、算定の開始時期を次のように定めています。

サービス算定の開始時期(単位数が増える加算)
訪問・通所系、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、小規模多機能型居宅介護など毎月15日以前の届出は翌月から、16日以降は翌々月から
認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設など届出が受理された日が属する月の翌月から(受理日が月の初日ならその月から)

改定の施行月は、例えば令和6年度改定で「4月から算定を始める加算の届出は4月1日以前になされていれば足りる」とされたように、特例が示されることがあります。令和8年度の処遇改善加算の計画書は、特例として4月15日まで、加算が新設されたサービスは6月15日までとされました。その年の通知と指定権者の案内で締切を確かめます。加算の届出の考え方は介護報酬の加算の取り方を参照してください。

利用者に説明する

単位数や利用者負担が変わる場合は、重要事項説明書の料金表を差し替え、利用者・家族に説明して同意を得ます。施設の食費や負担限度額が変わる場合も同じです。居宅サービスでは、区分支給限度基準額の中での利用のしかたが変わることがあるため、担当の介護支援専門員と情報を共有します。重要事項説明書の作り方は介護の重要事項説明書で整理しています。

運営規程に利用料を書いている場合は、変更の届出が要るかを指定権者の案内で確かめます。変更届の考え方は介護事業所の変更届を参照してください。

請求と計画を更新する

  • 請求ソフト:新しい単位数・加算コードに更新されているかを、施行月の最初の請求の前に確かめます
  • 計画書:加算の要件で計画書の様式や記載事項が変わる場合は、計画の見直しの時期に合わせて差し替えます
  • 賃金規程:処遇改善加算で賃金改善を行う場合は、賃金規程・キャリアパスの規程を改め、職員に周知します
  • 減算の点検:改定で新設された減算や、経過措置が終わる減算がないかを確かめます(介護事業所の減算の一覧)

3. 時系列の段取り

時期やること
審議報告の公表後自事業所に関わる変更を一覧にし、収支への影響を大まかに試算する
告示・通知の公表後算定要件を確かめ、取る加算・区分を決める。計画書・届出の書類を作る
施行の前月届出を締切までに出す。重要事項説明書を差し替え、利用者に説明する。請求ソフトの更新を確かめる
施行月新しい単位数で記録・請求する。Q&Aを確かめ、解釈が変わったものを直す
施行の翌月以降最初の請求の返戻・査定を確かめる。実績報告の期限を予定に入れる

落とし穴

  • 告示・通知を待ってから動き始め、届出の締切に間に合わない
  • 加算の届出は出したが、重要事項説明書の料金を差し替えていない
  • 請求ソフトの更新前の設定のまま請求し、返戻になる
  • 処遇改善加算の増えた分を、賃金改善に回す計画になっていない
  • 施行の後に出たQ&Aで解釈が変わったことに気づかない

チェックリスト

  • 自事業所のサービスで変わる基本報酬・加算・減算・基準を一覧にした
  • 収入の増減と、賃金改善の支出を試算した
  • 届出の締切と提出方法を指定権者の案内で確かめた
  • 重要事項説明書を差し替え、利用者に説明して同意を得た
  • 請求ソフトの更新と、施行月の最初の請求の結果を確かめた

4. まとめ

  • 改定は、方針、審議報告、概要、告示・通知、Q&A、施行の順に進む
  • 令和8年度の期中改定は、処遇改善加算の拡充(6月)と基準費用額(食費)の引上げ(8月)が中心
  • 加算の届出は、訪問・通所系は15日締切で翌月から、地域密着型の施設系などは受理日の翌月から。施行月は特例を確かめる
  • 利用者負担が変わるときは、重要事項説明書を差し替えて説明し、同意を得る
  • 請求ソフト、計画書、賃金規程を施行に合わせて更新し、施行後のQ&Aも追う

次の定期の改定は令和9年度です。令和8年度の審議報告では加算Ⅰ・Ⅱの取得の進展などを踏まえた処遇改善加算の整理が、大臣折衝事項では物価や賃金の上昇を適切に反映するための対応が、令和9年度改定の課題として挙げられています。改定の資料は、厚生労働省の「介護報酬改定について」のページで確かめてください。


参考資料