介護サービスの提供で事故が起きたときは、市町村、利用者の家族、居宅介護支援事業者等に連絡し、必要な措置を講じたうえで、事故の状況と処置を記録する義務があります(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第37条など)。市町村への報告の範囲・期限・様式は、厚生労働省の通知で標準が示され、市町村の要領で運用されています。

厚生労働省は令和6年11月29日、電子的な報告と受付を想定した新しい標準様式を示し、令和3年3月の旧通知を廃止しました(介護保険最新情報 Vol.1332)。この記事では、運営基準とこの通知をもとに、報告の範囲、期限、様式の項目、事業所内の体制を整理します。


1. 運営基準で求められること

義務内容根拠の例(訪問介護)
連絡と措置事故が発生した場合、市町村、利用者の家族、居宅介護支援事業者等に連絡し、必要な措置を講じる居宅サービス基準 第37条第1項
記録事故の状況と事故に際してとった処置を記録する同 第2項
損害賠償賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行う同 第3項
記録の保存事故の記録を、完結の日から2年間(条例で5年などの場合あり)保存する同 第39条第2項

通所介護など、ほかの居宅サービスも同じ形の条文があります。記録の保存期間は介護記録の保存期間で整理しています。

施設に求められる事故防止の体制

介護老人福祉施設などの施設は、事故の発生・再発を防ぐため、次の措置を講じなければなりません(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第35条第1項)。

  • 事故が発生した場合の対応や報告の方法を書いた事故発生の防止のための指針を整える
  • 事故や、事故に至る危険がある事態が生じた場合に報告され、分析を通じた改善策を従業者に周知する体制を整える
  • 事故発生の防止のための委員会と、従業者への研修を定期的に行う(委員会はテレビ電話装置等を使える)
  • これらを適切に実施する担当者を置く

これらが講じられていない場合は、安全管理体制未実施減算の対象になります。減算の全体は介護事業所の減算の一覧を参照してください。


2. 市町村への報告の範囲

厚生労働省の通知は、次の事故は原則として全て報告するとしています。

  1. 死亡に至った事故
  2. 医師(施設の勤務医・配置医を含む)の診断を受け、投薬・処置など何らかの治療が必要となった事故

それ以外の事故の報告は、各自治体の取扱いによります。市町村の要領で、国の範囲より広い事故を報告の対象に定めていることがあります。事業所の所在地と、利用者の保険者の市町村の要領を確かめてください。

対象サービス

標準様式は、介護保険施設、認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、養護老人ホーム、軽費老人ホームの事故報告を対象に作られていますが、その他の居宅等の介護サービスの事故報告でも可能な限り活用するよう示されています。


3. 報告の期限と方法

項目通知の内容
第1報標準様式の1から6の項目を可能な限り書き、事故の発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に出す
追加の報告状況の変化などに応じて行う
原因分析・再発防止策作成次第報告する
方法原則として電子メール等の電磁的方法
様式可能な限り国の標準様式を使う。市町村の独自の様式を使う場合も、標準様式の項目を含める

5日以内は「目安」で、第1報は「事故の発生後速やかに」が原則です。市町村が電話での一報などを定めている場合もあるため、要領で定められた連絡の順番と期限に従ってください。


4. 標準様式の項目

番号項目主な内容
1事故状況事故の程度(受診・自施設で応急処置、入院、死亡など)、死亡年月日
2事業所の概要法人名、事業所番号、事業所名、サービス種別、所在地
3対象者氏名・年齢・性別、サービス提供開始日、保険者、要介護度、認知症高齢者の日常生活自立度
4事故の概要発生日時、発生場所、事故の種別(転倒、転落、誤嚥・窒息、異食、誤薬・与薬もれ、医療処置関連など)、発生時の状況
5事故発生時の対応対応した人(施設内の医師・受診・救急搬送)、医療機関、受診方法、診断名、処置の概要
6事故発生後の状況利用者の状況、家族等への報告(続柄・年月日)、連絡した関係機関(他の自治体・警察など)
7事故の原因分析本人要因、職員要因、環境要因の分析
8再発防止策手順変更、環境変更、その他の対応、再発防止策の評価時期と結果
9その他特記すべき事項

令和6年の改訂では、選択式の項目がチェックボックス形式になり、市町村が独自の項目を追加できる欄が設けられました。第1報では1から6を埋め、7と8は分析が済んだ段階で最終報告として出す流れになります。


5. 事故が起きたときの手順

  1. 利用者の安全を確保する:応急処置、医師への連絡、救急搬送など、必要な措置をとります。
  2. 家族と関係者に連絡する:家族、居宅介護支援事業者(担当の介護支援専門員)に連絡し、連絡した日時と内容を記録します。
  3. 事実を記録する:発生日時、場所、発見の状況、とった処置を、推測を混ぜずに書きます。
  4. 市町村へ第1報を出す:報告の対象かを要領で確かめ、標準様式の1から6を書いて期限までに出します。
  5. 原因を分析する:本人・職員・環境の要因に分けて分析し、委員会で再発防止策を決めます。
  6. 最終報告を出し、周知する:原因分析と再発防止策を市町村に報告し、職員に周知して、評価の時期を決めます。

落とし穴

  • 受診したが「大きなけがではない」と判断し、治療を要した事故を報告していない
  • 家族への連絡を優先し、居宅介護支援事業者への連絡が漏れる
  • 事業所の所在地の市町村にだけ出し、利用者の保険者の市町村の要領を確かめていない
  • 第1報で原因分析まで書こうとして、5日の目安を過ぎる
  • ヒヤリ・ハットを記録していないため、事故の傾向を分析できない

チェックリスト

  • 所在地と保険者の市町村の事故報告の要領を確かめている
  • 報告の対象(死亡、治療を要した事故、自治体が定めるもの)を職員が知っている
  • 標準様式(または市町村の様式)をすぐ使える場所に置いている
  • 事故とヒヤリ・ハットの記録を、委員会で定期的に分析している
  • 再発防止策の評価の時期と結果を残している

6. まとめ

  • 事故が起きたら、市町村・家族・居宅介護支援事業者等に連絡し、措置を講じ、状況と処置を記録する
  • 死亡事故と、医師の診断を受け治療が必要となった事故は、原則として全て市町村に報告する
  • 第1報は標準様式の1から6を書いて、遅くとも5日以内を目安に電磁的方法で出す
  • 原因分析と再発防止策は作成次第報告する
  • 施設は、指針・報告と分析の体制・委員会と研修・担当者の4つの措置が必要

運営指導で確かめられる記録の準備は介護事業所の運営指導の準備で整理しています。報告の範囲・期限・様式は、市町村の要領で確かめてください。


参考資料