介護報酬の減算は、基準を満たさない状態や、義務づけられた取り組みが未実施の状態で、所定単位数から一定の割合・単位数を差し引く仕組みです。加算と違って届出をしなくても当てはまれば減算になるため、気づかないまま請求を続けると、運営指導で過去にさかのぼって返還を求められることがあります。

この記事では、令和6年度介護報酬改定の資料と、社会保障審議会介護給付費分科会に示された「介護報酬の算定構造」をもとに、減算を3つの型に分けて整理します。単位数・割合と要件は、最終的に告示と留意事項通知で確かめてください。


1. 減算の3つの型

型内容例
基準を満たさない人員・定員・体制が基準に届かない人員欠如減算、定員超過利用減算、夜勤の勤務条件を満たさない場合
取り組みが未実施運営基準で求められる措置・計画がない高齢者虐待防止措置未実施減算、業務継続計画未策定減算、身体拘束廃止未実施減算
提供の形による同じ建物への提供や、行わなかったサービスの分を差し引く同一建物減算、送迎を行わない場合の減算

どの型も、加算の届出の有無と関係なく当てはまります。加算の取り方は介護報酬の加算の取り方で整理しています。


2. 全サービスに共通する減算(令和6年度新設)

減算減る量対象
高齢者虐待防止措置未実施減算所定単位数の100分の1居宅療養管理指導・特定福祉用具販売を除く全サービス
業務継続計画未策定減算施設・居住系は所定単位数の100分の3、その他は100分の1居宅療養管理指導・特定福祉用具販売を除く全サービス

高齢者虐待防止措置未実施減算

虐待の発生・再発を防ぐための次の措置が講じられていない場合に減算されます。

  • 虐待防止のための対策を検討する委員会を定期的に開き、結果を従業者に周知する
  • 虐待防止のための指針を整える
  • 従業者に虐待防止のための研修を定期的に行う
  • これらを適切に実施するための担当者を置く

4つのうち1つでも欠けると対象になります。福祉用具貸与は3年の経過措置が設けられています。委員会・指針・研修の進め方は介護の高齢者虐待防止の取り組みで整理しています。

業務継続計画未策定減算

感染症と災害のどちらか、または両方の業務継続計画が未策定で、計画に従って必要な措置を講じていない場合に減算されます。改定の資料では、令和7年3月31日までは、感染症の予防・まん延防止の指針と非常災害に関する具体的計画を整えていれば減算を適用しない経過措置が示され、訪問系サービス・福祉用具貸与・居宅介護支援は同日まで減算を適用しないとされていました。現在は経過措置が終わっているため、計画がなければ減算の対象です。計画の作り方は介護事業所のBCPの作り方を参照してください。


3. サービス別の主な減算

身体拘束廃止未実施減算

施設・居住系サービスには以前からある減算で、令和6年度改定で短期入所系サービスと多機能系サービスにも所定単位数の100分の1の減算が新設されました。身体的拘束等の適正化のための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、拘束を行う場合の記録などの措置が講じられていない場合に当たります。訪問系・通所系サービスには、減算はありませんが、身体的拘束等を行う場合の記録が義務づけられました。詳しくは介護の身体拘束の廃止と適正化で整理しています。

人員欠如・定員超過

サービス減算減る量(算定構造)
通所介護利用者の数が利用定員を超える場合所定単位数×70/100
通所介護看護職員・介護職員の員数が基準に満たない場合所定単位数×70/100
施設・短期入所入所者数が定員を超える場合、医師・看護職員・介護職員などの員数が基準に満たない場合所定単位数に割合を乗じて算定

人員が基準に届いているかは、常勤換算で確かめます。数え方は介護の常勤換算の計算方法を参照してください。減算の始まりと解消の月は、留意事項通知で「翌月から」「翌々月から」のようにサービス・職種ごとに決まっているため、該当する箇所を確かめます。

施設で見る体制の減算

介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院などでは、共通の2つの減算のほかに、算定構造に次の減算が並んでいます。

  • 夜勤を行う職員の勤務条件基準を満たさない場合
  • ユニットリーダーの配置などユニットケアの体制が未整備である場合
  • 身体拘束廃止未実施減算
  • 安全管理体制未実施減算(事故の発生・再発を防ぐ措置が講じられていない場合)
  • 栄養管理の基準を満たさない場合

減る量は施設の種類ごとに告示で定められています。自施設に当てはまる単位数・割合は、告示と留意事項通知で確かめてください。

訪問介護の同一建物減算

事業所と同じ敷地内・隣接する敷地内の建物や、それ以外の同一の建物に住む利用者にサービスを提供する場合の減算です。

区分減る量
同一敷地内建物等の利用者、または同一建物の利用者20人以上所定単位数の10%
同一敷地内建物等の利用者50人以上所定単位数の15%
前6月の提供総数のうち、同一敷地内建物等の利用者への提供が90%以上(令和6年度新設)所定単位数の12%

通所介護・居宅介護支援の主な減算

サービス減算減る量(算定構造)
通所介護事業所と同一建物に居住する者、または同一建物から通う者に行う場合1日につき94単位
通所介護事業所が送迎を行わない場合片道につき47単位
通所介護共生型通所介護を行う場合(指定生活介護事業所が行う場合)所定単位数×93/100
居宅介護支援運営基準減算所定単位数×50/100(2月以上継続している場合は算定しない)
居宅介護支援特定事業所集中減算1月につき200単位
居宅介護支援事業所と同一建物の利用者、またはこれ以外の同一建物の利用者20人以上に居宅介護支援を行う場合所定単位数×95/100

居宅介護支援の運営基準減算は、利用者の居宅への月1回の訪問やモニタリングの記録、サービス担当者会議の開催など、運営基準で求められる手順が欠けた場合に当たります。2月以上続くと所定単位数を算定できなくなるため、1件の漏れでも影響が大きい減算です。


4. 減算を防ぐ点検

点検の手順

  1. 当てはまる減算を洗い出す:自事業所のサービスの算定構造を開き、「減算」「×◯/100」「−◯単位」の列を一覧にします。
  2. 取り組みの証拠をそろえる:委員会の議事録、指針、研修の記録、担当者の選任、業務継続計画を、年度ごとにファイルにまとめます。
  3. 人員と定員を毎月確かめる:勤務形態一覧表と利用者数の実績を月末に突き合わせ、基準を下回った月がないかを確かめます。
  4. 提供の形を確かめる:同一建物の利用者の数、送迎の有無が請求に正しく反映されているかを、請求ソフトの設定と照らします。
  5. 気づいたら早めに相談する:減算に当たる期間が見つかったら、指定権者に相談して請求を正します。

落とし穴

  • 委員会は開いているが、研修や担当者の選任が抜けていて、虐待防止措置未実施減算に当たる
  • 業務継続計画を感染症の分だけ作り、災害の分がない
  • 退職者が出た月に人員が基準を下回ったことに、翌月以降に気づく
  • 送迎をしなかった日の減算を、請求ソフトに入力していない
  • 居宅介護支援で、担当の交代の月にモニタリングの記録が抜ける

チェックリスト

  • 自事業所のサービスで当てはまる減算を一覧にした
  • 虐待防止の委員会・指針・研修・担当者の4つがそろっている
  • 感染症と災害の両方の業務継続計画がある
  • 人員と定員を毎月確かめる担当と日を決めている
  • 同一建物・送迎の減算が請求に反映されているかを確かめた

5. まとめ

  • 減算は、基準を満たさない場合、取り組みが未実施の場合、提供の形による場合の3つに分けて見る
  • 高齢者虐待防止措置未実施減算(100分の1)と業務継続計画未策定減算(100分の3または100分の1)は、居宅療養管理指導・特定福祉用具販売を除く全サービスが対象
  • 短期入所系・多機能系にも身体拘束廃止未実施減算(100分の1)が新設された
  • 通所介護の人員欠如・定員超過は所定単位数×70/100、居宅介護支援の運営基準減算は×50/100
  • 当てはまるかは毎月の点検で確かめ、見つけたら指定権者に相談して請求を正す

運営指導で確かめられる書類の準備は介護事業所の運営指導の準備で整理しています。減算の単位数・割合と要件は、告示と留意事項通知の最新の版で確かめてください。


参考資料