介護サービス事業者は、介護サービスの内容と事業所の運営状況に関する「介護サービス情報」を、都道府県知事に報告する義務があります(介護保険法第115条の35第1項)。報告の時期は、サービスの提供を始めるときと、都道府県知事(指定都市は市長)が毎年定める計画で決めたときです。報告した内容は、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で公表され、利用者や家族、ケアマネジャーが事業所を比べる材料になります。

令和6年度からは、報告する項目に事業所等の財務状況が加わり、財務諸表などの報告が求められるようになりました。この記事では、法律と施行規則、厚生労働省の通知とQ&Aをもとに、対象、報告する情報、手順、報告しないときの扱いを整理します。


1. 制度の根拠と仕組み

項目内容根拠
報告の義務介護サービスの提供を始めるときと、省令で定めるときに、介護サービス情報を都道府県知事に報告する介護保険法第115条の35第1項
報告する時都道府県知事が定める計画で定められたとき(計画の基準日前の1年間の介護報酬が100万円以下の事業所などを除く)同法施行規則第140条の44
報告する情報提供を始めるときは別表第一(基本情報)、毎年の報告は別表第一と別表第二(運営情報)同 第140条の45
公表都道府県知事は報告の内容を公表する(調査を行ったときは調査の結果の公表で代えられる)同法第115条の35第2項、施行規則第140条の46
調査都道府県知事は、報告に関して必要があると認めるときに調査を行える同法第115条の35第3項
報告しないとき期間を定めて報告・是正・調査を受けることを命じられる。命令に従わなければ指定の取消し・効力の停止同条第4項・第6項・第7項

制度の運用は、厚生労働省の通知「「介護サービス情報の公表」制度の施行について」(平成18年3月31日老振発第0331007号)が定めています。この通知は令和8年8月14日にも一部改正され、調査票(別添1〜7)が改められました。


2. 報告の対象と時期

報告の対象

施行規則第140条の44は、毎年の報告の対象から次の事業所を除いています。

  • 計画の基準日前の1年間に、提供した介護サービスの対価として支払いを受けた金額が100万円以下のもの
  • 災害その他、報告できないことに正当な理由があるもの

新しく介護サービスの提供を始める事業者は、金額にかかわらず、提供を始めるときに基本情報を報告します。

報告の時期は都道府県の計画で決まる

都道府県知事等は、毎年、報告に関する計画を定めて公表します。計画には、計画の基準日、計画の期間(1年)、報告の対象となる事業者、事業者ごとの報告の提出先と提出期限を定めます(施行規則第140条の48)。提出期限は計画の期間内で都道府県等の実情に応じて決まるため、所在地の都道府県・指定都市の計画と案内で確かめる必要があります。

国の通知は、報告する情報は、提出期限前のできるだけ直近の情報で作るとしています。


3. 報告する情報

区分主な内容報告
基本情報(別表第一)法人と事業所の名称・所在地・連絡先、介護保険事業所番号、管理者、職種別の従業者の数、勤務形態、経験年数、サービスの内容、利用料など必須
運営情報(別表第二)説明と同意、計画の作成、認知症・プライバシー・虐待防止・身体的拘束の適正化の取組、相談・苦情への対応、研修、事業運営の透明性など必須(毎年の報告)
財務状況が分かる書類財務諸表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)または簡易な計算書類必須(令和6年度から)
一人当たり賃金設置主体、職種、勤続年数などが分かる形での公表が可能任意
任意報告情報都道府県等が定める情報(介護の質や従業者の労働環境。例:離職率、有給休暇の取得状況)都道府県等の定めによる

運営情報の項目は、虐待の防止や身体的拘束の適正化など、運営基準で求められている取組と重なります。取組の中身は介護事業所の虐待防止と身体的拘束の適正化で整理しています。

財務状況の書類の出し方

国の通知とQ&A(令和6年11月29日)は、次のように整理しています。

  • 書類は、直近の事業年度を終えた時点で作ったもの
  • 原則は財務諸表(事業活動計算書または損益計算書、貸借対照表、資金収支計算書またはキャッシュフロー計算書)
  • 会計基準の上でキャッシュフロー計算書の作成が求められていない場合は、出さなくてよい
  • 会計基準で求められていない等の事情があれば、資産・負債・収支の内容が分かる簡易な計算書類でもよい
  • 報告は事業所・施設単位が原則。事業所単位で会計処理をしていないなどやむを得ない場合は法人単位でもよく、事業所単位と法人単位の書類が混在してもよい

一体的に運営しているサービス

介護老人福祉施設と併設の短期入所生活介護、通所介護と地域密着型通所介護のように、同じ事業者が一体的に運営しているサービスは、国の通知が例として示す一体的サービスの区分ごとに、主たるサービスの運営情報の報告をもって他のサービスの報告とみなせる場合があります。区分は都道府県等が実情に応じて定めるため、所在地の案内で確かめます。


4. 調査の扱い

調査は、報告の内容の根拠となる事実を確かめるために、都道府県知事または都道府県が指定した指定調査機関が行います。国の通知は、調査員が事業所を訪ね、事業者を代表する人と面接する方法を基本とし、都道府県知事が認める場合は面接以外の方法もあり得るとしています。

法律は、調査を「報告に関して必要があると認めるとき」に行えるとしており、毎年すべての事業所に調査が入るわけではありません。どの事業所をいつ調査するか、調査の手数料の有無は、都道府県の調査計画と条例で決まります。調査が入る場合は、報告した運営情報の根拠となる記録(マニュアル、研修の記録、委員会の議事録など)を確かめられます。


5. 報告の手順

  1. 計画と通知を確かめる:都道府県・指定都市の報告計画と、届いた報告の案内(提出期限、ログインの情報)を確かめます。
  2. 基本情報を最新にする:職種別の従業者数、勤務形態、利用料、サービスの内容を、提出期限の直近の情報に直します。常勤・非常勤の数え方は介護の常勤換算の計算方法で整理しています。
  3. 運営情報の根拠をそろえる:「あり」と答える項目ごとに、根拠となる記録(マニュアル、研修記録、議事録など)を確かめます。
  4. 財務状況の書類を用意する:直近の事業年度の財務諸表(または簡易な計算書類)を、事業所単位か法人単位で用意します。
  5. システムで報告する:介護サービス情報公表システムの事業者用の画面から入力・提出します。
  6. 公表の内容を確かめる:公表された画面で、連絡先、営業日、利用料、空きの情報などに誤りがないかを確かめます。

公表の内容は事業所の案内にもなる

公表システムの情報は、利用者や家族、ケアマネジャーが事業所を比べるときに見られます。運営情報で「なし」の項目が多い、職員数や利用料が古いといった状態は、事業所の印象にも関わります。事業所の情報発信の全体は介護事業所の Google マップの整え方も参考になります。

落とし穴

  • 報告の案内のメールを見落とし、提出期限を過ぎてから気づく
  • 前年の内容をそのまま出し、職員数や利用料が古いまま公表されている
  • 運営情報で「あり」と答えたのに、根拠の記録がない
  • 経営情報の報告を済ませたので、情報公表の報告も済んだと思い込む
  • 財務状況の書類を、事業年度が終わる前の数字で出している

チェックリスト

  • 所在地の都道府県・指定都市の報告計画で、提出期限を確かめた
  • 基本情報(職員数・勤務形態・利用料)を直近の情報に直した
  • 運営情報の「あり」の項目ごとに、根拠の記録をそろえた
  • 直近の事業年度の財務諸表(または簡易な計算書類)を用意した
  • 公表された画面で、内容に誤りがないかを確かめた

6. まとめ

  • 介護サービス情報は、提供を始めるときと、都道府県の計画で定めるときに報告する(介護保険法第115条の35)
  • 計画の基準日前の1年間の介護報酬が100万円以下の事業所などは、毎年の報告の対象外
  • 報告するのは基本情報・運営情報と、令和6年度からの財務状況が分かる書類。一人当たり賃金は任意
  • 調査は必要と認めるときに行われ、面接が基本
  • 報告しないと命令の対象になり、従わなければ指定の取消し・停止もありうる

経営情報の報告との違いは介護サービス事業者の経営情報の報告で、運営指導での確かめられ方は介護事業所の運営指導の準備で整理しています。提出期限と調査の予定は、所在地の都道府県・指定都市の案内で確かめてください。


参考資料