介護サービスの提供に関する記録は、厚生労働省令の運営基準で「その完結の日から二年間」の保存が義務づけられています。ただし、運営基準は指定権者(都道府県・市町村)が条例で定めていて、保存期間を5年間とする独自基準を置く自治体が多くあります。省令の2年だけを見て廃棄すると、条例の基準に違反することがあります。

記録は、介護報酬の請求の根拠でもあります。保存されていないと、サービスを提供した事実を確かめられず、報酬の返還を求められることがあります。この記事では、運営基準の条文と、指定権者の案内をもとに、保存が必要な記録と年数、数え始め、電子保存の扱いを整理します。


1. 運営基準で保存が求められる記録

運営基準の「記録の整備」の条は、どのサービスもおおむね同じ形です。例えば訪問介護は、次のように定めています(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第39条)。

  • 事業者は、従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録を整備しておかなければならない(第1項)
  • 利用者に対するサービスの提供に関する次の記録を整備し、その完結の日から二年間保存しなければならない(第2項)
サービス保存が求められる記録(第2項)根拠
訪問介護訪問介護計画、提供した具体的なサービスの内容等の記録、身体的拘束等の記録、市町村への通知に係る記録、苦情の内容等の記録、事故の状況と処置の記録居宅サービス基準 第39条
居宅介護支援居宅サービス事業者等との連絡調整の記録、居宅介護支援台帳(居宅サービス計画、アセスメントの結果、サービス担当者会議等の記録、モニタリングの結果)、身体的拘束等の記録、市町村への通知、苦情、事故の記録居宅介護支援基準 第29条
介護老人福祉施設施設サービス計画、提供した具体的なサービスの内容等の記録、身体的拘束等の記録、市町村への通知、苦情、事故の記録介護老人福祉施設基準 第37条

ほかのサービスも、それぞれの計画と提供の記録、苦情・事故の記録などが並びます。身体的拘束等の記録は、令和6年度改定で訪問系・通所系サービスにも加わりました。身体拘束の記録の書き方は介護の身体拘束の廃止と適正化で整理しています。

保存期間が書かれていない記録

第1項の従業者・設備・備品・会計の記録(勤務の実績、資格証の写し、雇用契約、給付費の請求の控え、加算の根拠の書類など)は、省令では年数が定められていません。ただし、人員基準や加算の算定を確かめる根拠になるため、提供の記録と同じ年数を目安に保存しておくのが安全です。条例で年数を定めている自治体もあります。


2. 保存期間の数え始め

省令の「完結の日」

厚生労働省の留意事項通知は、「その完結の日」を、個々の利用者につき、契約終了(契約の解約・解除、他の施設への入所、利用者の死亡、利用者の自立等)により一連のサービス提供が終了した日を指すとしています。この読み方では、長く利用している人の記録は、契約が終わるまで保存期間が始まりません。

条例の独自基準の例

自治体保存期間の定め
大阪市サービスの提供に関する記録を、各サービス共通でサービスを提供した日から5年間(省令は完結の日から2年間)
札幌市通常の記録は完結の日から2年。報酬請求に係る記録は、介護給付があった日から5年(または完結の日から2年と、給付があった日から5年の遅い日まで)

札幌市は令和2年4月1日から、「完結の日」の解釈を「記録の作成目的が果たされた日」に変えています。苦情・事故の記録は対応が終わった日、計画書やサービス提供記録など報酬請求の書類は介護給付があった日とし、契約の終了前でも保存年限を過ぎた記録を廃棄できるとしています。

このように、保存期間と数え始めは自治体ごとに違います。事業所の所在地(地域密着型サービスや居宅介護支援は市町村、それ以外は都道府県・指定都市・中核市)の条例と案内で確かめてください。


3. 運営規程・重要事項説明書との整合

保存期間を運営規程や契約書、重要事項説明書に書いている場合は、条例の年数と合っているかを確かめます。札幌市は、保存期間のみの変更であれば変更届の提出は不要とし、重要事項説明書や契約書に保存期間を書いている場合は運営規程と表現をそろえるよう案内しています。変更届の要否は自治体ごとに違うため、変更の前に確かめます。変更届の考え方は介護事業所の変更届を参照してください。


4. 電子保存の扱い

運営基準は、書面で作成・保存することが定められた記録について、書面に代えて電磁的記録で行うことができるとしています(居宅サービス基準 第217条第1項など)。利用者への交付・説明・同意などは、相手方の承諾を得て電磁的方法で行えます(同条第2項)。

電子で保存するときは、次の点を押さえます。

  • 見読できる:保存期間中、画面や印刷ですぐに内容を示せる
  • 改ざん・消失を防ぐ:更新の履歴が残る仕組みや、バックアップを持つ
  • 安全管理:個人情報保護委員会・厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に沿って、アクセスの権限や端末の管理を決める
  • 検索できる:利用者・月・記録の種類で探せるように、名前の付け方とフォルダの分け方を決める

紙の記録を電子化して紙を捨てる場合は、スキャンの手順と、電子の記録が原本と同じ内容であることを確かめる方法を決めておきます。


5. 保存と廃棄の手順

  1. 条例の年数を確かめる:所在地の指定権者の条例で、記録ごとの保存期間と数え始めを確かめます。
  2. 記録の一覧を作る:記録の種類ごとに、保存期間、数え始め、置き場所(紙・電子)を一覧にします。
  3. 年度ごとに箱・フォルダを分ける:数え始めの年度で分けておくと、廃棄の時期を判断しやすくなります。
  4. 廃棄の前に確かめる:保存期間を過ぎているか、係争中の案件や返還の手続き中のものがないかを確かめます。
  5. 廃棄を記録する:シュレッダーや溶解処理の業者を使い、廃棄した記録の種類と日付を残します。

落とし穴

  • 省令の2年だけを見て、条例で5年とされている記録を廃棄する
  • 契約が続いている利用者の記録を、作成から2年で廃棄する(省令の「完結の日」の読み方と違う)
  • 勤務の実績や加算の根拠の書類を、提供の記録より早く廃棄する
  • 電子化したデータを、退職した職員の端末や個人のアカウントに残したままにする
  • 運営規程の保存期間が、条例の年数と食い違っている

チェックリスト

  • 所在地の指定権者の条例で、保存期間と数え始めを確かめた
  • 記録の種類ごとに保存期間・置き場所の一覧がある
  • 運営規程・重要事項説明書の保存期間が条例と合っている
  • 電子の記録は、権限の管理とバックアップを決めている
  • 廃棄した記録の種類と日付を残している

6. まとめ

  • 運営基準は、提供の記録を「その完結の日から二年間」保存するよう定めている
  • 条例で5年間などの独自基準を置く自治体が多く、数え始めの読み方も自治体ごとに違う
  • 省令の「完結の日」は、契約終了などで一連のサービス提供が終了した日
  • 記録は電磁的記録で保存できるが、見読性・安全管理・バックアップを確保する
  • 保存されていない記録は、報酬の返還を求められる原因になりうる

運営指導で確かめられる書類の準備は介護事業所の運営指導の準備で整理しています。保存期間は、所在地の指定権者の条例と案内で確かめてください。


参考資料