介護サービス事業者は、事業所・施設ごとの収益と費用、職種別の人員数などの「介護サービス事業者経営情報」を、毎会計年度の終了後3月以内に都道府県知事へ報告する義務があります(介護保険法第115条の44の2第2項、同法施行規則第140条の62の2の4)。報告は、厚生労働省の「介護サービス事業者経営情報データベースシステム」で行います。
この制度は令和6年4月に創設されました。決算書は法人単位で作っていても、報告は事業所・施設ごとの数字が要るため、会計の区分を決算の前から整えておくことが必要です。この記事では、法律と施行規則、都道府県の案内をもとに、対象、期限、報告項目、報告しないときの扱いを整理します。
1. 制度の根拠と仕組み
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 報告の義務 | 介護サービス事業者は、経営情報を事業所・施設の所在地の都道府県知事に報告する | 介護保険法第115条の44の2第2項 |
| 報告する事項 | 名称・所在地などの基本情報、収益と費用の内容、職種別の人員数その他の人員に関する事項、その他必要な事項 | 同法施行規則第140条の62の2の3 |
| 期限と方法 | 毎会計年度の終了後3月以内に、電磁的方法(厚生労働大臣が管理する設備への記録)その他適切な方法で | 同 第140条の62の2の4 |
| 調査・分析と公表 | 都道府県知事が調査・分析し、内容を公表するよう努める。厚生労働大臣は整理・分析した結果をインターネットで提供する施策を行う | 同法第115条の44の2第1項・第3項 |
| 報告しないとき | 都道府県知事は期間を定めて報告・是正を命じられる。命令に従わなければ、指定の取消し・効力の停止ができる | 同条第6項・第8項 |
目的は、地域で必要な介護サービスを確保するために、事業者の経営の状況を把握し、施策や報酬の検討に使うことです。
2. 対象になる事業者と対象外
原則として全ての介護サービス事業者が対象です。施行規則は、次のどちらかに当たる事業者を除いています(第140条の62の2の2)。
- その会計年度に提供した介護サービス(居宅介護サービス費、地域密着型介護サービス費、施設介護サービス費、介護予防サービス費などの支給対象)の対価として支払いを受けた金額が100万円以下の事業者
- 災害その他、報告できないことに正当な理由がある事業者
事業者が持つ事業所・施設の一部だけが上の基準に当たる場合は、その事業所・施設の分は報告の事項に含まれません(第140条の62の2の3ただし書)。
千葉県や京都府の案内では、居宅療養管理指導と介護予防支援は報告の対象外とされています。地域密着型サービスや居宅介護支援も、事業所ごとの報告が必要です。自法人のサービスが対象かどうかは、所在地の都道府県の案内で確かめます。
3. 報告する項目
| 区分 | 項目 | 必須か |
|---|---|---|
| 基本情報 | 事業所・施設の名称、所在地など | 必須 |
| 収益と費用 | 事業所・施設ごとの収益と費用の内容(介護事業収益、給与費、委託費、減価償却費など) | 必須 |
| 人員 | 職種別の人員数 | 必須 |
| 給与 | 職種別の給与(給料・賞与) | 任意 |
厚生労働省の案内も、収益と費用、職員の職種別人員数を報告の内容とし、職種別の給与を任意の事項としています。入力の科目と定義は、システムの操作マニュアルで確かめます。
報告の単位
報告は事業所・施設ごとが原則です。千葉県の案内では、法人単位で報告する場合、都道府県ごとではなく、その法人の全国の事業所のデータを一つの報告にまとめて差し支えないとされています。
準備しておく会計の区分
- サービス・事業所ごとの区分:法人全体の決算書から、事業所ごとの収益と費用を切り出せるように、日々の仕訳で事業所(拠点・サービス)を付けておきます
- 共通経費の按分:本部費、複数の事業所で共有する家賃・車両・人件費は、按分の基準(利用者数・面積・勤務時間など)を決め、毎年同じ方法で配ります
- 職種別の人数:勤務形態一覧表や給与台帳から、決算期の職種ごとの人数を出します
- 職種別の給与(任意):処遇改善加算の賃金改善の管理と同じ台帳を使うと、職種別の給与を出しやすくなります。処遇改善加算の区分は介護職員等処遇改善加算の一覧で整理しています
4. 期限と報告の手順
期限
施行規則は、毎会計年度の終了後3月以内と定めています。3月決算なら6月末、12月決算なら3月末が目安です。制度の初年度は、令和6年3月31日から同年12月31日までに会計年度が終わる分を、令和7年3月31日までに報告することとされていました。
厚生労働省の案内には、システム改修のため、令和7年3月以降に終わる会計年度の分の受付を一時停止した旨の掲載がありました。受付の再開の状況と、その年度の期限の扱いは、厚生労働省と所在地の都道府県の最新のお知らせで確かめてください。
手順
- GビズIDプライムを取る:データベースシステムへのログインに、GビズIDプライムのアカウントが要ります。取得には日数がかかることがあるため、決算の前に用意します。
- 決算を確定させ、事業所ごとに集計する:会計の区分と按分の基準に沿って、事業所・施設ごとの収益と費用、職種別の人数を出します。
- データベースシステムに入力する:画面から入力するか、定義書に沿ったファイルを取り込みます。
- 報告を完了させる:入力の途中で止めず、報告の状態が完了になっているかを確かめます。
- 控えを保管する:報告した内容と、集計の元になった資料を保管します。
5. 報告しないときの扱い
介護保険法第115条の44の2は、報告をしない、または虚偽の報告をした事業者に対し、都道府県知事が期間を定めて報告・是正を命じることができるとしています(第6項)。命令に従わない場合は、指定居宅サービス事業者や介護保険施設などの指定の取消し、許可の取消し、効力の停止ができます(第8項)。地域密着型サービスや居宅介護支援については、都道府県知事が指定をした市町村長に通知する仕組みです(第7項・第9項)。
指定の取消しにつながる手続きの流れは、運営指導・監査と同じく重いものです。運営指導の準備は介護事業所の運営指導の準備を参照してください。
落とし穴
- 介護サービス情報の公表の年次報告と同じものと思い込み、経営情報の報告を出していない
- 法人全体の決算書しかなく、事業所ごとの収益と費用を出せない
- GビズIDプライムの取得が間に合わず、期限までにログインできない
- 決算期が3月でない法人が、3月決算を前提に期限を数えている
- 入力の途中で止め、報告が完了になっていない
チェックリスト
- 自法人の会計年度の終了日から、3月以内の報告期限を決算の日程に入れた
- 対象外の基準(年100万円以下、居宅療養管理指導など)に当たる事業所を確かめた
- 事業所ごとの会計の区分と、共通経費の按分の基準を決めている
- GビズIDプライムのアカウントを法人で管理している
- 報告の完了を画面で確かめ、控えを保管している
6. まとめ
- 介護サービス事業者は、毎会計年度の終了後3月以内に経営情報を都道府県知事に報告する(介護保険法第115条の44の2、施行規則第140条の62の2の4)
- 対価の受取りが年100万円以下の事業者などは対象外。居宅療養管理指導・介護予防支援も対象外とされている
- 報告するのは基本情報、事業所ごとの収益と費用、職種別の人員数。職種別の給与は任意
- 公表は分析結果の形で、個別の事業所が特定される形ではない
- 報告しないと命令の対象になり、従わなければ指定の取消し・停止もありうる
収支の考え方は介護事業所のM&Aと事業承継でも、事業所ごとの損益の見方として触れています。受付の期間・入力の方法は、厚生労働省と都道府県の案内で確かめてください。
参考資料
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第115条の44の2(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
- 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第140条の62の2の2〜第140条の62の2の6(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036
- 厚生労働省「介護サービス事業者経営情報の報告について」:https://www.mhlw.go.jp/stf/tyousa-bunseki.html
- 千葉県「介護サービス事業者経営情報の報告」:https://www.pref.chiba.lg.jp/koufuku/kaigohoken/kaigokeiei.html
- 京都府「介護サービス事業者経営情報の報告等について」:https://www.pref.kyoto.jp/jigyousho/kaigosabisujigyousyanokeieijouhouhoukokunituite.html