介護職の求人票は、法律で決められた労働条件をもれなく書くことと、応募者が働く姿を思い描けるように書くことの両方がそろって、はじめて応募につながります。どちらかが欠けると、応募が来ない、来ても面接で辞退される、入職後に「聞いていた話と違う」と辞めてしまう、といった結果になりがちです。
この記事では、職業安定法と同法の施行規則・指針をもとに、求人票に必ず書く事項と書いてはいけない表示を確かめたうえで、夜勤・手当・処遇改善などの介護職ならではの書き方を整理します。
1. 求人票に必ず書く労働条件
職業安定法第5条の3は、労働者を募集する者に、応募しようとする人へ業務の内容と賃金・労働時間その他の労働条件を明示することを義務づけています。明示する事項は、職業安定法施行規則第4条の2第3項に並んでいます。
| 事項 | 書く内容と介護職での例 |
|---|---|
| 業務の内容 | 雇入れ直後の業務と、変更の範囲(例:訪問介護員として入職、法人内の通所介護へ異動の可能性あり) |
| 契約期間 | 期間の定めの有無。有期の場合は期間 |
| 試用期間 | 有無と期間 |
| 更新の基準 | 有期契約の場合、更新の有無と判断の基準。通算期間や更新回数に上限があれば、その上限 |
| 就業場所 | 雇入れ直後の場所と、変更の範囲(例:法人が運営する市内の3事業所) |
| 労働時間 | 始業・終業の時刻、時間外労働の有無、休憩時間、休日 |
| 賃金 | 賃金の額(賞与や臨時の賃金などを除く) |
| 保険 | 健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の適用 |
| 募集者 | 雇う法人の氏名または名称 |
| 派遣 | 派遣労働者として雇う場合はその旨 |
| 受動喫煙 | 就業場所の受動喫煙を防ぐ措置(例:屋内禁煙、敷地内禁煙) |
業務内容と就業場所の「変更の範囲」、有期契約の更新上限は、令和6年4月に加わった事項です。複数の事業所を運営する法人は、異動がありうる範囲を最初から示しておくと、入職後の異動で揉めにくくなります。
明示の方法と時期
- 明示は、書面の交付か、応募者が希望した場合の電子メール等で行います(施行規則第4条の2第4項)
- 指針は、原則として応募者と最初に接触する時点までに示すよう求めています。一部をやむを得ず後で示す場合は、その旨もあわせて示します
- 試用期間中の条件が本採用後と違う場合は、それぞれの条件を示します(同条第6項)
- 明示した内容の記録は、募集が終わる日(その後に契約を結ぶ場合は契約を結ぶ日)まで保存します(同条第7項)
条件を変えるとき
面接の結果、求人票と違う条件で採用する場合は、職業安定法第5条の3第3項により、変える内容を契約前に示す必要があります。指針は、当初の条件と変える内容を見比べられる書面を渡すか、労働条件通知書で変わった箇所に下線や色を付ける方法を挙げています。
2. 書いてはいけない表示
誤解を生じさせる表示
職業安定法第5条の4は、求人の情報に虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をすることを禁じています。指針は、次のような表示をしないよう定めています。
- 賃金(賃金形態、基本給、手当、通勤手当、昇給、固定残業代など)を、実際より高額であるかのように表示すること
- 職種や業種について、実際の業務と著しくかけ離れた名称を使うこと
- 関係会社がある場合に、雇う予定の法人を関係会社と混同させること
- 雇用の募集と、業務委託(請負)の受注者の募集を混同させること
介護職で起こりやすいのは、夜勤手当や資格手当を最大の額で足し上げた月給だけを大きく書き、条件を満たさない人の月給が分からない書き方です。「月給○万円〜○万円(夜勤月4回・介護福祉士の場合の例)」のように、額の前提を書き添えます。
固定残業代
一定時間分の残業代を定額で払う仕組みをとる場合は、名称にかかわらず、指針にもとづき次の3点を示します。
- 固定残業代の計算方法(対象となる時間数と金額)
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業時間を超えた時間外・休日・深夜の労働には、割増賃金を追加で支払うこと
年齢と性別の制限
| 制限 | ルール |
|---|---|
| 年齢 | 労働施策総合推進法第9条により、原則として年齢にかかわりなく均等な機会を与えます。例外は同法施行規則第1条の3に限られ、定年を下回ることを条件とする無期契約の募集、法令で年齢による制限がある業務、長期のキャリア形成を目的に若年者を無期契約で募集する場合(職業経験を条件にしない)などです |
| 性別 | 男女雇用機会均等法第5条により、性別にかかわりなく均等な機会を与えます。「女性スタッフ募集」「寮母さん」のような表示は避け、業務内容で書きます |
「利用者の多くが女性なので女性がよい」「体力が要るので若い方」という事情があっても、そのまま求人票に書くのではなく、入浴介助の有無や夜勤の人数など、業務の条件として書くのが基本です。
最新の内容に保つ
募集を行う者は、募集の情報を正確かつ最新の内容に保たなければなりません(職業安定法第5条の4第2項)。指針は、募集を終えたり内容を変えたりしたときは速やかに掲載を終える・直すこと、情報の時点を明らかにすることを求めています。充足した求人を出したままにしない、処遇改善の見直しで手当が変わったら求人票も直す、という運用を決めておきます。
SNSや広告で募集するとき
厚生労働省は、SNSを含む広告で募集するときは、募集主の氏名(名称)・住所・連絡先・業務内容・就業場所・賃金を必ず表示するよう求めています。住所はビル名・部屋番号まで、連絡先は電話番号・メールアドレス・自社サイトの問い合わせフォームのいずれかを書きます。自社サイトの募集要項へのリンクだけでは足りず、広告そのものに書く必要があるとされています。
3. 応募につながる仕事内容の書き方
指針は、業務の内容を職場環境を含めて、できる限り具体的かつ詳細に示すよう求めています。介護職の求人で応募者が知りたいのは、次のような点です。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| サービスと規模 | 定員29人の小規模多機能型居宅介護、利用者の平均要介護度は3程度 |
| 1日の流れ | 送迎、入浴介助、昼食、レクリエーション、記録の時間帯 |
| 夜勤 | 月の回数の目安、夜勤帯の職員の人数、仮眠の有無、夜勤明けの休み |
| 人員体制 | 日中の職員数、看護職員や機能訓練指導員の配置 |
| 記録と機器 | タブレットで記録、見守り機器の導入など |
| 教育 | 入職時の研修の期間、同行の回数、資格取得の支援 |
賃金と手当の書き分け
- 基本給と手当を分け、手当は名称・金額・支給の条件を書きます(例:夜勤手当 1回○円、資格手当 介護福祉士○円)
- 処遇改善の手当は、月給に含まれるのか、別に支給するのか、毎月か一時金かを書き分けます。区分と要件は介護職員等処遇改善加算の一覧で整理しています
- 昇給は、規程にもとづく時期と基準を書きます。任用の要件や昇給の仕組みは処遇改善加算のキャリアパス要件とそろえておくと、求人票と規程の内容が食い違いません
- 賞与は明示の義務の対象外ですが、書く場合は前年度の実績であることを明記し、確約と受け取られない書き方にします
雇用形態ごとに求人を分ける
常勤と非常勤、夜勤専従などは、労働時間と賃金の形が違います。1つの求人票にまとめると条件が読み取りにくくなるため、雇用形態ごとに求人を分けると誤解が生じにくくなります。外国人の方を受け入れる場合は、在留資格ごとの要件を外国人介護人材の受け入れで確かめておきます。
4. 出す前の点検
落とし穴
- 業務内容と就業場所の変更の範囲が書かれていない
- 有期契約なのに更新の基準や上限が書かれていない
- 試用期間中の賃金が本採用後と違うのに、本採用後の額しか書いていない
- 手当を足し上げた最大額だけを書き、前提の条件が分からない
- 充足した求人や、手当が変わる前の求人を出したままにしている
チェックリスト
- 施行規則第4条の2第3項の事項がすべて書かれている
- 業務内容・就業場所の変更の範囲、有期契約の更新上限が書かれている
- 試用期間中の条件が違う場合、両方の条件を書いている
- 固定残業代がある場合、時間数・金額・基本給・超過分の支払いを書いている
- 年齢・性別の制限と受け取られる表現がない
- 手当の名称・金額・条件と、処遇改善の手当の扱いを書き分けている
- 募集を終えたとき・条件を変えたときに直す担当と手順を決めている
5. まとめ
- 求人票には、施行規則第4条の2第3項の事項を書く。変更の範囲と更新上限を忘れない
- 実際より高く見える賃金の表示や、実態とかけ離れた職種名は使わない
- 固定残業代は、時間数・金額・基本給・超過分の支払いの3点を示す
- 年齢・性別は原則として制限しない。必要な事情は業務の条件として書く
- 仕事内容は、1日の流れ・夜勤・人員体制・教育まで具体的に書く
- 条件を変えたら、求人票も同じ日に直す
ハローワークや求人サイトの入力欄は、それぞれの様式に従います。書き方に迷うときは、所在地を管轄するハローワークの窓口で確かめてください。
参考資料
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の3・第5条の4(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141
- 職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)第4条の2(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000012
- 厚生労働省「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針」(平成11年労働省告示第141号):https://www.mhlw.go.jp/content/001003997.pdf
- 厚生労働省「労働者の募集広告には、『募集主の氏名(又は名称)・住所・連絡先(電話番号等)・業務内容・就業場所・賃金』の表示が必要です」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1_00006.html
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)第9条(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132
- 同法施行規則(昭和41年労働省令第23号)第1条の3(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/341M50002000023
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)第5条(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113