退院直後の利用者を受け入れたいなら、病院の退院支援の担当者が、診療報酬の入退院支援加算にもとづいてどのように動いているかを知っておくことが出発点です。病院は、入院後早期に退院が難しい患者を洗い出し、地域の介護サービス事業者などとあらかじめ連携体制を作ることを、加算の施設基準で求められています。介護事業所は、この「連携機関」の一つになり得ます。
この記事では、入退院支援加算の仕組みと施設基準、退院前カンファレンス(退院時共同指導)の対象職種を確認し、介護事業所の側から関係を作り、退院直後から受け入れるための準備を整理します。
1. 病院の入退院支援加算の仕組み
入退院支援加算は、患者が入院早期から計画的な支援を受けて、住み慣れた地域で療養や生活を継続できるよう、病院の取り組みを評価する診療報酬です(A246)。令和6年度診療報酬改定にもとづく算定要件・施設基準は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 退院困難な要因の抽出 | 入退院支援加算1は原則として入院後3日以内、加算2は原則として入院後7日以内に、退院困難な要因を持つ患者を抽出する |
| 話し合い・調整 | 現在の病状や今後の療養生活について家族等と話し合いを始め、転院・退院後の療養を担う機関との連絡調整、福祉サービスの導入支援などを行う |
| 退院支援計画 | 抽出した患者について、退院支援計画の作成に着手する |
| 点数 | 加算1・一般病棟入院基本料等の場合:700点、療養病棟入院基本料等の場合:1,300点(退院時1回) |
福祉サービスの導入支援が算定要件に含まれているため、病院の入退院支援部門は、退院後に介護サービスへつなぐことを前提に動いています。介護事業所にとっては、この段階で情報が届く関係を作れているかどうかが、紹介を受けられるかの分かれ目になります。
2. 「連携機関」になる:施設基準が求める体制
入退院支援加算1の施設基準は、病院に対して、地域の関係機関とあらかじめ協議し、一定数以上の連携機関を持つことを求めています。
| 施設基準(入退院支援加算1) | 内容 |
|---|---|
| 連携機関の定義 | 連携する保険医療機関、介護保険法に定める居宅サービス事業者、地域密着型サービス事業者、居宅介護支援事業者もしくは施設サービス事業者、または障害福祉の指定特定相談支援事業者・指定障害児相談支援事業者等 |
| 連携機関の数 | 転院・退院体制等についてあらかじめ協議を行い、連携機関の数が25以上であること |
| 面会の頻度 | 入退院支援部門の職員と、それぞれの連携機関の職員が、年3回以上の頻度で面会し、情報の共有等を行っていること(対面が原則。一部、ビデオ通話も可) |
訪問介護・通所介護などの介護サービス事業者は、この「連携機関」に含まれます。 病院は施設基準を満たすために、地域の介護サービス事業者との関係を継続的に作る必要があるため、事業所の側から情報を届けることには、病院にとってもメリットがあります。面会は個別の退院調整に関する面会も含めてよいとされているため、個別の利用者の退院調整の機会そのものが、連携機関としての関係づくりにもなります。
3. 退院前カンファレンス(退院時共同指導)の対象職種
退院前に、病院と在宅療養を担う関係者が共同で患者・家族に説明・指導を行う仕組みが、診療報酬の退院時共同指導料です。加算(退院時共同指導料2の注3)の対象となる職種は、次のとおり定められています。
- 在宅療養担当医療機関の保険医または看護師等
- 保険医である歯科医師またはその指示を受けた歯科衛生士
- 保険薬局の保険薬剤師
- 訪問看護ステーションの保健師・助産師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 相談支援専門員
このうち3者以上が共同して指導を行った場合に、病院側の加算が算定されます。訪問介護・通所介護などの介護サービス事業所の職員は、この算定要件の対象職種としては明記されていません。ただし、これは診療報酬の点数算定上の話であり、退院前カンファレンスへの同席自体を妨げるものではありません。実務では、受け入れ予定の事業所が同席を求められることがあります。声がかかったら、受け入れの条件を整理して同席し、その場で疑問点を確認してください。
4. 事業所からできる準備
病院の入退院支援部門との接点を作る
- 担当エリアの病院の入退院支援部門・地域連携室を把握する:病院のホームページや、地域の医療・介護連携の会議で確認する
- 受け入れの条件を1枚にまとめて届ける:対応できる医療的ケアの範囲、受け入れまでの日数、空き状況、連絡の窓口
- 更新のたびに知らせる:空き状況や対応できる範囲が変わったら、同じ経路で知らせる
- 地域の会議に参加する:退院支援に関する地域の会議、地域ケア会議など、顔の見える関係ができる場に参加する
ケアマネジャーへの情報提供の考え方はケアマネジャーへの営業と情報提供で、地域包括支援センターとの連携は地域包括支援センターとの連携|総合事業・要支援者の受け入れ方で扱っており、病院との連携も基本的な考え方は同じです。紹介の見返りとしての利益の提供は禁じられています(指定居宅サービス等基準 第35条ほか)。
チェックリスト
- 対応できる医療的ケアの範囲(喀痰吸引、経管栄養、酸素療法など)を明確にしている
- 受け入れまでの日数の目安(退院当日〜数日以内など)を示せる
- 緊急時の連絡・搬送の体制が整っている
- 空き状況に日付を入れて更新している
- 退院前カンファレンスへの参加依頼に応じられる体制がある
5. 退院直後の受け入れの実務
紹介を受けたら、見学・体験の案内、重要事項の説明と同意、契約という流れは他の経路と変わりません。詳しい手順は見学・体験利用の対応|問い合わせから契約までの流れと介護の重要事項説明書|記載事項と説明・同意・契約の手順を参照してください。退院直後は、通常より短い期間での対応が求められることが多いため、重要事項の説明から契約までを短縮できる体制(担当者の事前確保、書類のひな形の用意)を整えておくと、紹介を受けやすくなります。
6. 落とし穴
- 病院側の窓口を把握していない:入退院支援部門・地域連携室のどこに情報を届ければよいかがわからないと、関係が始まりません。
- 受け入れ条件が曖昧:「相談してください」だけでは、病院側が紹介の判断をしにくくなります。対応できる医療的ケアの範囲を具体的に示します。
- 空き状況の更新が遅い:古い情報のまま紹介を受けると、受け入れられずに双方の手間が増えます。
- 紹介の見返りを提供する:運営基準で禁じられています(指定居宅サービス等基準 第35条)。
- 退院前カンファレンスへの準備不足:対象職種でなくても同席を求められることがあります。受け入れ条件を整理してから臨みます。
7. まとめ
- 病院は入退院支援加算にもとづき、入院後3日または7日以内に退院困難な患者を抽出し、福祉サービスの導入支援を行う
- 入退院支援加算1の施設基準は、介護サービス事業者を含む連携機関を25以上確保し、年3回以上の面会を求めている。介護事業所は「連携機関」になり得る
- 退院時共同指導の加算対象職種に介護サービス事業所の職員は含まれないが、退院前カンファレンスへの同席自体は妨げられない
- 受け入れの条件(医療的ケアの範囲・空き状況・緊急時対応)を1枚にまとめ、病院の入退院支援部門に継続的に届ける
- 紹介を受けた後は、見学・体験、重要事項の説明、契約という通常の流れで進める
参考資料
- 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第5号、令和6年3月5日)第26の5 入退院支援加算(施設基準・連携機関の定義と25以上の要件):https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001293317.pdf
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(入院IV・横断的個別事項)」入退院支援加算1・2の見直し:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001252073.pdf
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第35条(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037
入退院支援加算・退院時共同指導料の点数や施設基準は、診療報酬改定のたびに見直されます。実務では、連携先の病院が現在どの加算を届け出ているか、地域の入退院支援部門に確認してください。