通所介護(デイサービス)を開業する際にまず決めるべきは、利用定員を何人にするかです。利用定員が18人以下であれば「地域密着型通所介護」として市町村長が指定し、19人以上であれば「通所介護」として都道府県知事(指定都市・中核市では市)が指定します。定員によって指定権者だけでなく、一部の人員基準も変わるため、物件を契約する前に定員の方針を固めることが開業準備の出発点になります。
この記事では、社会保障審議会介護給付費分科会の資料と、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号。以下「基準省令」)にもとづいて、人員・設備基準を整理します。法人設立から指定までの共通の流れは「介護事業の開業の流れ」で扱っています。
1. 定員で変わる指定権者
| 区分 | 利用定員 | 指定権者 |
|---|---|---|
| 地域密着型通所介護 | 18人以下 | 市町村長(原則としてその市町村の被保険者が対象) |
| 通所介護 | 19人以上 | 都道府県知事(指定都市・中核市では市) |
地域密着型通所介護は、原則としてその市町村の被保険者だけが利用できるサービスです。小規模な事業所を想定して市町村指定になっている分、物件の規模や採算ラインの見極めが経営の成否を左右します。定員を19人以上にするか18人以下にするかは、見込める利用者数、物件の面積、人員体制のコストをあわせて検討してください。
2. 人員基準:生活相談員・看護職員・介護職員・機能訓練指導員
基準省令第93条などにもとづく人員基準は、次のとおりです(社会保障審議会介護給付費分科会の資料より)。
| 職種 | 基準 |
|---|---|
| 生活相談員 | 事業所ごとに、サービス提供時間に応じて専従で1人以上(常勤換算方式) |
| 看護職員 | 単位ごとに専従で1人以上。通所介護の提供時間帯を通じて専従する必要はなく、訪問看護ステーション等との連携も可能 |
| 介護職員 | 単位ごとにサービス提供時間に応じて専従で、利用者数15人までは1人以上。15人を超える場合は、利用者数が1人増すごとに0.2を加えた数以上。単位ごとに常時1人配置されること |
| 機能訓練指導員 | 1人以上 |
| 常勤要件 | 生活相談員または介護職員のうち1人以上は常勤 |
定員10人以下の地域密着型通所介護事業所については、看護職員または介護職員のいずれか1人の配置(常勤換算方式)で足りる特例があります。小規模な事業所を検討する場合は、この特例の適用条件を指定権者に確認してください。
生活相談員の勤務時間数には、サービス担当者会議や地域ケア会議などへの出席時間を含めることができます。
3. 設備基準:食堂・機能訓練室・相談室
設備基準は次のとおりです。
| 設備 | 基準 |
|---|---|
| 食堂・機能訓練室 | それぞれ必要な面積を有するものとし、その合計した面積が利用定員×3.0平方メートル以上 |
| 相談室 | 相談の内容が漏えいしないよう配慮されていること |
指定通所介護事業所と指定居宅サービス事業所等を併設している場合で、利用者へのサービス提供に支障がないときは、基準上両方のサービスに規定がある設備や、規定のない設備を共用できます。小規模多機能型居宅介護など他のサービスと同じ建物で開業する場合は、面積の按分や共用の可否を指定権者と事前に確認してください。
4. 指定申請に向けた段取り
- 定員と指定権者の確定:物件の面積・立地から利用定員を仮決めし、地域密着型(市町村長)か通常規模等(都道府県知事等)かを確定させる
- 指定権者への事前相談:申請締切、事前相談の要否、様式を確認する
- 職員の確保:生活相談員・機能訓練指導員・看護職員・介護職員のうち、申請書に氏名を書く職員を先に決める
- 設備の確保:食堂・機能訓練室の合計面積が定員×3平方メートル以上になるよう、レイアウトを確定する
- 指定申請:締切までに申請書と添付書類を提出し、補正の指示に対応する
5. 開業でつまずきやすい点
- 定員と面積の整合を後回しにする:食堂・機能訓練室の合計面積は定員に比例して必要になるため、先に定員を決めてから物件を探すと計画が立てやすくなります
- 地域密着型の利用者の範囲を見落とす:地域密着型通所介護は、原則としてその市町村の住民だけが対象です。隣接市からの利用を見込む事業計画は、その市町村の指定の可否を先に確かめてください
- 介護職員の配置数の計算を誤る:利用者数が15人を超える部分は「1人増すごとに0.2を加えた数」で積み上げる計算式のため、定員を変更する際に再計算が必要です
- 併設設備の共用可否の未確認:他のサービスと設備を共用する場合、基準上の規定の有無によって扱いが変わります
6. まとめ
- 通所介護は利用定員18人以下なら市町村長指定の地域密着型通所介護、19人以上なら都道府県知事(指定都市・中核市では市)指定の通所介護になる
- 人員基準は生活相談員(専従1人以上)・看護職員(単位ごと専従1人以上)・介護職員(15人まで1人以上、超過分は1人増ごとに0.2加算)・機能訓練指導員(1人以上)。定員10人以下の地域密着型は看護・介護職員いずれか1名でも可
- 設備基準は食堂・機能訓練室の合計面積が利用定員×3.0平方メートル以上、相談室に遮音の配慮
参考資料
- 社会保障審議会介護給付費分科会 第180回(令和2年7月20日)資料1「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護」:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000650016.pdf
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第93条(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第20条・第22条(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100034