認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、市町村長が指定する地域密着型サービスです。市町村の介護保険事業計画に定めた必要利用定員総数に達している場合、市町村長は指定をしないことができる「総量規制」の対象サービスにグループホームが含まれているため、多くの市町村は新規の整備枠を公募で選び、選定された事業者だけが指定申請に進む運用になっています。

この記事では、公募の仕組みと流れ、指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号。以下「基準省令」)にもとづく人員・設備基準を整理します。


1. 仕組み:なぜ公募になるのか

厚生労働省老健局介護保険計画課の資料は、施設・居住系サービスの定員設定と指定拒否の仕組み(総量規制)について、介護保険法第117条(市町村介護保険事業計画)及び第118条(都道府県介護保険事業支援計画)にもとづき、介護保険事業計画に定めた定員数に達しているか、申請に係る指定によってこれを超える場合、その他計画の達成に支障が生じるおそれがあると認める場合には、都道府県知事・市町村長は事業者の指定等を拒否できるとしており、対象サービスに認知症高齢者グループホームを挙げています。

定員に上限がある以上、同じ枠に複数の法人が開設を希望すれば、先着順ではなく事業計画の中身で選ぶ必要があります。そのため市町村は、老人福祉圏域ごとの整備計画にもとづいて公募要項を公表し、応募事業者を書類とヒアリングで審査したうえで、指定予定事業者を選定する運用をとっています。


2. 公募の流れ

ある町の令和8年度公募要項を例に、公募の実務を示します(自治体により様式・スケジュールは異なります)。

項目内容(例)
公募の趣旨町の高齢者福祉計画・介護保険事業計画にもとづく計画的な整備
募集内容サービス種別、整備数(定員・ユニット数)、募集区域
応募資格法人格を有すること/指定基準を満たす(または事業開始までに満たす)こと/指定の欠格事由に該当しないこと(介護保険法第78条の2第4項各号)/長期的な運営ができること/土地・建物を確実に確保できる見込みがあること
提出書類応募申込書、事業計画書、事業内容企画書、資金計画書、収支計画書、定款・登記事項証明書、資産の状況、指導監査の状況報告、残高証明書、開設までのスケジュール、配置図・平面図
選定方法選定委員会が提出書類とヒアリングの内容を審査・評価し、市町村長が選定
補助金都道府県の地域医療介護総合確保基金(介護分)を活用した建物整備費・開設準備経費の補助を町村が交付する例がある(補助の有無・額は選定を保証するものではない)

選定はあくまで「指定予定事業者」の決定であり、介護保険法上の指定や老人福祉法上の認可そのものを確約するものではありません。 選定後に法人が建築や職員採用を進め、指定基準を満たした段階で、あらためて指定申請を行います。公募のスケジュールは「随時募集」とする自治体もあれば、年1回の募集時期を定める自治体もあるため、整備を希望する地域の担当課に早めに相談することが開業日を守る近道です。


3. 人員基準:介護従業者・管理者・代表者・計画作成担当者

人員基準は、共同生活住居(ユニット)単位で決まります。

職種基準(基準省令の条)
介護従業者共同生活住居ごとに、夜間・深夜の時間帯以外は利用者3人またはその端数ごとに常勤換算1人以上。夜間・深夜は1人以上の宿直・夜勤。介護従業者のうち1人以上は常勤(第90条)
計画作成担当者事業所ごとに1人以上。専らその職務に従事する者で、認知症介護実践者研修などを修了。1人以上は介護支援専門員(第90条第5項〜第10項)
管理者共同生活住居ごとに常勤・専従。特別養護老人ホーム等での3年以上の認知症高齢者の介護の実務経験と、「認知症対応型サービス事業管理者研修」の修了が必要(第91条)
代表者認知症高齢者の介護に従事した経験または保健医療・福祉サービスの事業経営に携わった経験があり、「認知症対応型サービス事業開設者研修」を修了(第92条)

管理者・代表者は、利用者の処遇に支障がない場合は他の職務や他の事業所との兼務ができますが、夜間・深夜に1人の介護従業者で夜勤させるか、2人以上を配置するかは、3ユニットが同一階に隣接し安全対策を講じているかなどの要件で変わります。常勤換算の数え方や夜勤体制の例外は、都道府県・指定都市・中核市が公表している運営の手引きで確認してください。


4. 設備基準:共同生活住居の数と居室

設備基準は基準省令第93条に定められています。

  • 指定認知症対応型共同生活介護事業所は、共同生活住居を1以上3以下(サテライト型は1または2)有する。ただし、用地の確保が困難であるなど地域の実情により事業所の効率的運営に必要と認められる場合は、3とすることができる
  • 共同生活住居の入居定員(同時にサービス提供を受けられる利用者数の上限)は5人以上9人以下
  • 居室は原則個室(利用者の処遇上必要と認められる場合は2人部屋も可)で、床面積は7.43平方メートル以上
  • 居室のほか、居間、食堂、台所、浴室、消火設備その他非常災害に際して必要な設備を備える
  • 利用者の家族との交流の機会の確保や地域住民との交流を図る観点から、住宅地または住宅地と同程度に交流の機会が確保される地域にあること

本体事業所の近くにサテライト型の事業所を置く場合は、本体事業所とサテライト事業所の共同生活住居の数の合計を最大4までとすること、本体事業所との距離が自動車等で概ね20分以内の近距離であることなど、別の要件が定められています。


5. 開業でつまずきやすい点

  • 公募に間に合わない:整備計画は数年単位で立てられており、公募のタイミングを逃すと次の公募まで数年待つ地域もあります。開業を考えた時点で、自治体の高齢者福祉計画・介護保険事業計画の整備予定を確認してください。
  • 管理者・代表者の研修受講が開業の律速になる:管理者研修・開設者研修は実務経験が前提で、開催回数も限られます。選定後ではなく、応募の検討段階で受講計画を立てておくと開業が遅れません。
  • 立地の交流要件を見落とす:住宅地または住宅地と同程度に地域住民との交流機会が確保される場所であることが求められるため、物件選びの早い段階で指定権者に相談してください。
  • 土地・建物の確保見込みが曖昧なまま応募する:公募の応募資格に「土地、建物を確実に確保できる見込みであること」が含まれるため、契約の目処が立つ前の段階からの資金計画・収支計画の精度が選定に影響します。

介護事業全体の開業の流れ(法人設立から指定までの共通の手順)は「介護事業の開業の流れ」にまとめています。


6. まとめ

  • グループホームは市町村長が指定する地域密着型サービスで、総量規制の対象。整備計画の定員枠が埋まっている地域では、多くの市町村が公募で事業者を選ぶ
  • 公募では、事業計画書・資金計画書などの書類審査とヒアリングをもとに選定委員会が審査し、市町村長が選定する。選定は指定や認可を確約するものではない
  • 人員基準は共同生活住居ごとに、介護従業者(3人ごとに1人)・計画作成担当者(1人以上、うち1人は介護支援専門員)・管理者(常勤専従、実務経験+研修)・代表者(経験+研修)
  • 設備基準は共同生活住居1〜3、入居定員5〜9人、個室7.43平方メートル以上

参考資料